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「サッカー界への殺人未遂」欧州SL崩壊も… プレミアが悩む“選手の給与高すぎ+外資系オーナー問題”の解決策はあるのか 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2021/05/04 17:03

「サッカー界への殺人未遂」欧州SL崩壊も… プレミアが悩む“選手の給与高すぎ+外資系オーナー問題”の解決策はあるのか<Number Web> photograph by Getty Images

アーセナルサポーターも本拠地エミレーツ・スタジアムでオーナー陣への怒りをあらわにした

 ピッチで結果を出す選手がクラブの「肉体」だとすれば、知名度や優勝実績と無関係に、地元のクラブや先祖代々の贔屓クラブとして固い絆で結ばれているサポーターは、クラブの「魂」に当たる。

 ところが、放映権料やスポンサー料がチケットの売上げを大きく上回る昨今では、その魂の重さを収益に占める割合で測り、軽視する傾向が強まっている。とはいえさすがにコロナ禍で無観客試合が続く状況で、スタジアムを埋める観衆の有り難味を痛感しているはずという淡い期待があった。

ESLの概念にはサポーターの「サ」の字もない

 しかし、通算3度目のロックダウンで規制緩和が始まって間もない国内で、欲が巨大なビッグ6からも創設が告げられたESLの概念には、サポーターの「サ」の字もなかった。

 政府も動くレビューの成果として、クラブにサポーター団体代表者の役員入りを強いる法的拘束力が求められる。すでにクラブ公認サポータークラブは存在する。ビッグクラブともなれば、海外にも支部を持つ。しかし、恥を知らない「シェイムレス6」と呼ばれるようになったプレミアのビッグ6は、SNS上とスタジアムの前で怒りと悲しみの猛抗議に出ざるを得なかったファンの意見を、事前に聞こうとはしなかった。

 事後の4月23日、筆者にも届いたチェルシーからサポーターに向けてのメールには、「ファンとの意見交換を重視しているが、今回は時間と守秘義務制約があったため実施に至らなかった」と記されていた。

 確かに、表面的には突然の創設発表。しかしページ数は167ページ、期間は23年間にも及ぶとされるESLの契約書が一朝一夕に出来上がるはずはなく、契約を作り上げた立場の創設メンバー12クラブにファンの意見を尊重する姿勢があれば、対応に漕ぎ着ける時間は十分にあったはずだ。

現経営陣による文言は鵜呑みにできない

 謝罪と説明のレターには、「ファン代表の参画を可能にする仕組み作りを経営陣主導で進める」との意向も記されていたが、強烈な裏切り行為に走った現経営陣による文言など鵜呑みにはできない。

 存在しないも同然のように扱われるのであれば、サポーターの代表を日頃から経営陣に存在させるしかない。個人的に、チェルシーがプレミア追放でESL参戦なら代わりに試合を観に行こうかと考えたブレントフォードは、プレミア昇格を争う西ロンドンのライバル関係のないクラブだが、ファンの発言権が保証されているクラブという一面もある。

【次ページ】 バイエルンのような“1強”はあり得ない

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