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「サッカー界への殺人未遂」欧州SL崩壊も… プレミアが悩む“選手の給与高すぎ+外資系オーナー問題”の解決策はあるのか
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2021/05/04 17:03
アーセナルサポーターも本拠地エミレーツ・スタジアムでオーナー陣への怒りをあらわにした
最も割合が高かったのはエバートンの85%。2016年からオーナーを務めるファルハド・モシリは、ESL入りを試みたビッグ6に対するポイント剥奪処分を求めているが、もしも古豪のエバートンにも声が掛かっていたとしたら、メンバーになるだけで400億円前後の収入を得る誘惑に勝てただろうか?
クラブ収益以上に増す選手給与の規模
巨額の放映権収入があるプレミアでは、クラブの収益が増しても、それ以上のペースで選手給与の規模が増し続けている。例えば、今年1月に発表されたデロイト社の『2020年フットボール・マネーリーグ』でも、プレミア内では売上高トップのユナイテッドでは、GKダビド・デヘアが昨季の最高給取りとなっている。
推定年俸は週給で約37万5000ポンド(約5600万円)。英国における同年国民平均所得は3万8600ポンド。フルタイム雇用されている庶民の10倍近い額を1週間で稼ぐ計算だ。同じユナイテッドで、キングことエリック・カントナが稼ぎ頭となっていたのは1995年のこと。ちなみに、デヘアのサラリーは当時週給約18000ポンド(約270万円)だったカントナの約21倍にあたる。一方、同じ25年間で国民の平均所得は2倍程度にしか増えていない。
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他のスポーツ同様、プロ選手のなかでも傑出した能力の持ち主が破格の年俸を稼ぐこと自体に異論を唱える者は少ない。問題は「並」クラスに対する報酬の規模。プレミアでは、2019年に選手の平均年俸が300万ポンド(約4.5億円)を超えた。
降格スレスレの“1.5軍”でも年俸約4億円
復帰1年目の今季、またも降格の瀬戸際に立たされているフルアムを例にとれば、昨年10月からベンチ入りが精一杯のDFマイケル・ヘクターでさえ、年俸は約260万ポンド(約3.9億円)の待遇だ。
サラリーキャップ導入は非現実的という意見も多いイングランド国内だが、ロンドンでの試合開催で人気上昇中のアメリカのNFLのように、選手個々ではなく、スカッド単位で給与総額に上限を設ける手はあるように思える。
資金力のあるビッグクラブは、スター選手の獲得が可能なままだ。少なくとも現状では30代のベテランに適用されるケースが多い、パフォーマンス・ベースの給与体系の一般化が検討されるべきだろう。導入が叶った暁には、遵守具合のチェックがレギュレーターに課される任務の1つとなる。
既存オーナーの適性確認と、新オーナー候補者の適性検査も、リーグではなく中立的な新組織に委ねられるべきだ。