プレミアリーグの時間BACK NUMBER
「サッカー界への殺人未遂」欧州SL崩壊も… プレミアが悩む“選手の給与高すぎ+外資系オーナー問題”の解決策はあるのか
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2021/05/04 17:03
アーセナルサポーターも本拠地エミレーツ・スタジアムでオーナー陣への怒りをあらわにした
今夏で結成20周年を迎えるサポーター団体『ビーズ・ユナイテッド』は、特別株主の資格と重役としての1席をクラブに認められているのだ。
ファンをクラブ役員とする手段としては、サポーターがクラブ株式の過半数を所有することが前提のブンデスリーガを参考にすべきだとする声が再び強まってもいる。しかし、過去にも検討されて「不適当」と判断されたように、ドイツモデルにもデメリットはある。クラブの資金力が横ばいにならざるを得ず、リーグ内の力関係が変わりにくいのだ。
バイエルンのような“1強”はあり得ない
今季のブンデスリーガ、第31節終了時点で首位に立つバイエルンは、通算31度目のリーグ優勝と9連覇達成が濃厚。バイエルンを「絶対王者」と讃えれば聞こえは良いが、裏を返せば他の17チームは絶対的な敗者ということになる。これは、リーグ全体の競争力を理由に「プレミア最強論」を主張するイングランド人にとっては、あり得ないリーグ事情だ。
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実際、今季はシティの王座奪回がほぼ間違いないプレミアでは、過去8シーズン異なる5クラブがリーグ王者となっている。ピッチ上でのシステムと同様、ピッチ外でも完璧な仕組みがあるとは思えない。であれば、ブレントフォードでの実施例もあるサポーターズ・トラストのように、ファン団体代表者のクラブ役員入りを義務付ける形でスタートするのが最も現実的だろう。
2つ目は、国内のサッカー界全体を取り締まる新組織の設立だ。
グラスルーツ・レベルを底辺とするピラミッド各層の間で利害関係による意見の対立が増え、経済的な格差が広がるイングランドでは、御役所的と非難されるイングランドFA、ビッグクラブに意見できないと指摘されるプレミアリーグ、そのトップリーグに右に倣えのフットボールリーグ(2~4部)とは別に、全体を見渡して総括する中立的な組織による管理と指針提供が望ましい。
「レギュレーター」の存在は非常に重要
ESLの脅威から身を守るため、つまりはプレミア強豪が金銭欲に駆られる事態を避けるという意味でも、正式な団体としての「レギュレーター」の存在は非常に重要だ。
強欲の塊のようなESLだが、各クラブが抱える収益拡大の必要性は理解できる。最大級の支出項目である選手給与の高騰は止まる所を知らない。プレミアでは、すでに監査報告済みの2018-19シーズンの会計によると、20クラブ平均で収益の60%が選手への給与支払いで消えている。