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声援なしに慣れたくないが… 湘南・谷晃生や清水・権田修一ら“守護神の声”に注目したい理由【カメラマン視点で見るJリーグ】
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2021/05/01 06:00
セーブ後、ボールを大事そうに抱きかかえる谷晃生。今こそ彼らのプレーをじっくりと注目したい
ハイボール処理の上手さに見る予測と準備
U-24代表候補として大迫敬介や沖悠哉らとポジションを争っている谷が湘南で見せている特徴的なプレーにハイボールの処理がある。
その守備範囲は広く、反対側のゴールを撮影しているのにもかかわらず、ゴールマウスが全く写っていないことがある。どこまで飛び出すかどうかの判断と、確実にキャッチする安定感を両立させている谷がいるからこそ、平均身長が高いわけではない湘南の最終ラインが地上戦でその特徴を存分に発揮できている。
判断の正確さと安定感は、常に予測と準備をし続けていることで生まれている。谷自身、予測や準備、そして集中を切らさないことについて様々な場面で度々口にしているが、ハイボールに飛び出す時の、自分が行く、ということを示す合図としての声が一切の迷いのない早さで聞こえてくることでそれを知ることができる。
絶え間ない予測と準備は、リスタートの積極性からチームの攻撃スイッチを入れることにも繋がっている。前線が動き出していれば、一気に大きく蹴り出すことで相手を慌てさせる。あるいは相手フォワードがまだ近くに残っていても、引いていくのを待たずに即座に最終ラインにボールを託すプレーもする。
自身が状況を把握していることはもちろん、守備時のコーチングだけでなく、声による呼びかけで味方の油断を正し、リスタートのクオリティを保とうとしているから可能なことだ。
ピッチに入れば先輩後輩は関係ないとはいえ、堂々とした物言いでチームを引き締めるそういう声を聞くことで、ただプレーを見ている以上に頼もしさが増し、守護神という言葉がより相応しく思えてくる。
声を発しないシーンも際立ってくる
そして、そうやって声を聞いていると、声を発しないシーンも際立ってくる。
コーチングの後でシュートに反応するために集中する瞬間。なんでもないボールをミスなくしっかりとキャッチするために神経をとがらせる瞬間。あるいは、勝利が近づいた終盤にボールを手中に収めた時、はやる気持ちを抑えるかのようにその状況をゆっくりと噛み締めて時間を使おうとする瞬間。
それまで声を聞いていたからこそ、声があるわけではない当たり前の光景1つ1つが積み重なって試合を作っていることを感じることができる。
谷だけではない。