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内田篤人と小笠原満男が欧州で学んだこと「蹴落としてでも這い上がる精神」遠慮するとパスタもなくなる?

posted2021/04/02 11:02

 
内田篤人と小笠原満男が欧州で学んだこと「蹴落としてでも這い上がる精神」遠慮するとパスタもなくなる?<Number Web> photograph by Toru Hiraiwa

海外での経験を鹿島に還元した内田と小笠原。2人がこれからの世代へ伝えていくこととは?

text by

池田博一

池田博一Hirokazu Ikeda

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Toru Hiraiwa

 全2回の後編は、内田篤人と小笠原満男が経験した海外での学びについて。『月刊アントラーズフリークス別冊内田篤人』で実現した対談の未公開分を特別に掲載する(#1前編はこちら)。

「海外での経験をどう還元するのか」

 アントラーズに復帰してからの2人は、時期は違えど同じ言葉を口にした。

 海外を経験して学んできたものがある。文化、言葉、生活の違い、様々な障壁を乗り越えてつかんできたものがあった。勝負へのメンタリティーからクラブ全体のあり方まで、2人が感じてきたものは何だったのか。自ら学んだものをアントラーズに還元するための源泉とはどんな経験だったのか。現役を終えた2人が語る、海外で学んだこととは? 競争の本質をここに紐解く。

◇◇◇

小笠原 俺がイタリアに行って一番変わったのはポジションだよね。もともとオフェンシブだったのが、イタリアに行ったら、オフェンシブはウイングみたいなポジションだった。“俺のポジションはここじゃないな”と思って、ボランチをやるようになって。そうしたら、とにかく守備がすごい。

 俺が行ったメッシーナは弱いチームだったからなのか、とにかく「奪いにいけ」と言われ続けた。イタリアの下位チームによくあるような感じ。日本のようにグループでどこかに追いやって、チームとしてボールを奪いにいく形ではなかった。目の前の相手とのマッチアップは“絶対に負けない”っていう。

 俺は篤人と違って、イタリアではほぼ試合に出られなかった。1年間で7、8試合くらいかな。いろんなものを成し遂げて帰ってきたわけではないからね。日本に帰ったときは、「こいつは試合に出られなくて日本に帰ってきた」と見られるなかで、なんとか「遊びに行っていたわけではなく、得たものもあるんだ」っていうのを見せたくて必死でやっていたかな。そのなかで一番表現したのは、守備でボールを奪うこと。海外に行ったみんなが感じるところだと思うけど、いかに奪えるか。抜かれないようにする守備ではない。試合をやればボールポゼッションは、いつも20対80。奪わないと攻撃できないというチームだったからね。

内田 そういうときって、日本だと“一度止まってちょっと下がりながら守備をする”っていう教え方をしますよね。

小笠原 そこは今、育成をやっていて感じるね。「飛び込むな!」「足を出すな!」という指導者の声をよく聞く。

内田 でも、やっていることが違うじゃないですか。指導者が言っていることと、満男さんがやってきたことが違う。だから、若いうちにそういう“行けちゃう守備”を教えてもらうのはすごくいいことだなと思う。

 アントラーズのユースはトップの隣で練習していることがあるからよく見るけれど、球際で“ガシャガシャ行っているな”という印象を感じますね。海外ではみんな、それですよね。飛び込める選手に飛び込むなっていう方が簡単。行けない選手に行けという方が、どうしても難しい。やっぱり日本と違うのは守備かなと思う。対戦してもイタリアのチームは戦術的に細かい。守備についてイタリアはやっぱりすごい。あ、実際にプレーしてないからわかんないけど、すごそう(笑)。

小笠原 (笑)。守備はうるさい。でもポジショニングとか、細かい戦術練習はやるけれど、あまり試合にはつながってないかな。結局、1対1で奪う。でも、守備の文化はすごくある国だと思う。ダービーでは、ドローでもサポーターに「負けなかったぞ!」って表現をするくらい、守備や負けないことに対してのこだわりは感じた。日本だったらドローで「よっしゃ!」はない。アウェイでドローはOKなんだよね。そこは、どうしても違和感があったけど。

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