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内田篤人と小笠原満男が欧州で学んだこと「蹴落としてでも這い上がる精神」遠慮するとパスタもなくなる? 

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池田博一

池田博一Hirokazu Ikeda

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photograph byToru Hiraiwa

posted2021/04/02 11:02

内田篤人と小笠原満男が欧州で学んだこと「蹴落としてでも這い上がる精神」遠慮するとパスタもなくなる?<Number Web> photograph by Toru Hiraiwa

海外での経験を鹿島に還元した内田と小笠原。2人がこれからの世代へ伝えていくこととは?

――海外に行って、改めて日本人の良さを感じるところはありましたか?

内田 いいところもあり、悪いところもありですよね。大人しいとかもそう。スタジアムで日本人にあれだけの熱狂はできない。そもそも日本人はうるさいくらいしゃべれないから。でも、おじいちゃんおばあちゃんと子どもが安全に観戦できるスタジアムという面もある。そういう意味で、それぞれに違いはある。

 ドイツでは、選手としては相手を殺しにいくくらいのプレーをやっていかないといけないんだけど、逆に日本人のように90分、笛が鳴るまで集中してチームとして連動するのは、アフリカ人にはできない。すごいプレーをするけれど、適当なところがある。とんでもない化け物もいるけれど、チームとしての完成度としては、やっぱり日本人の特長は活かせると思う。W杯を見ればよく分かるところだけれど。そもそも教育が違うんだと思う。小さい子の指導にも関わってくるところで、これは良い・悪いの話ではなくて、そういうのはあるなあと思いますね。

小笠原 思いやりとか、人に親切にするというのは、日本人の良さだけれど、海外では遠慮している大人しいやつと見られる。日本で「出る杭は打たれる」という言葉があるけれど、あっちでは“出ていかないと受け入れてくれない”という感じがある。

 一回、食事のときにベンチだと分かっていたから、「食事はスタメン組が先に食べるべき」という、なんとなく日本での風潮があって遠慮していたら、パスタが全部なくなっていた。「2回目はいつ?」って聞いたら、もうないよって。ああ、食べておけばよかったと思ったけど、なんかそういうところで損をするというか。

 FWの選手も、日本人はすぐにパスしてしまうところを、シュートを打ちにいく。得点ランキングで1つでも上にいけば他のビッグクラブから引き抜かれる環境だからね。自分を出していかないと生き残れない。遠慮したり、“お先にどうぞ”なんていう日本の美徳は、あっちでは通用しない。人を蹴落としてでも這い上がろうという方が成功するのかなと思ったなあ。

内田 試合に出続けることは、他の選手を蹴落としていることになるんです。大変でしたけどね、自分のポジションを守るのは。だって、ドイツ代表でW杯優勝したときに右サイドバックで全試合出場していた選手が競争相手のときもあったし、2部からいい選手を獲ってきたこともあったし、ケガで離れているときも補強されるなというのは覚悟していた。監督が代わるたびにポジションはないなと思っていたし、その危機感は常にありましたね。

小笠原 そう、危機感は大事だよね。それはアントラーズに加入したときもそうだし、どこにいっても引退するまで常に持っていたものだった。やっぱり長く続ける、タイトルを獲り続ける選手になるには、そういう意識が必要なんだと思うね。

【前編から見る】アントラーズ復帰前、内田篤人に小笠原満男から届いた一通のメール…「たいしたことねぇなぁ」の初対面から12年後の変化とは

【写真特集はこちら】「眼光が鋭かった」小笠原満男と「ヒョロヒョロだった」内田篤人(他40枚)

「鹿島アントラーズ30周年記念サイト」
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