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巨人を去った27歳、巨人に残った27歳…ジャイアンツ4年前のドラ5&ドラ6(93年組)が東京ドームで“逆襲”した日 

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中溝康隆

中溝康隆Yasutaka Nakamizo

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photograph bySankei Shimbun

posted2021/03/31 11:06

巨人を去った27歳、巨人に残った27歳…ジャイアンツ4年前のドラ5&ドラ6(93年組)が東京ドームで“逆襲”した日<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

2017年ドラフト6位で巨人入りした若林晃弘。オープン戦で打率.371、2本塁打、10打点という結果を残して開幕スタメンを勝ち取った

 一塁側のG党からも拍手が送られる中、東海大の先輩・菅野智之から中犠飛とタイムリー。9回には93年組の出世頭で、今季からクローザーを務める中川皓太から一時同点となる2点タイムリーを放った。なお田中と中川は東海大の同級生でもある。横浜の背番号38は開幕戦セ・リーグ最多記録となる6打点を叩き出し、わずか1試合で昨季のシーズン打点数に並んでみせた。

 その日、若林も第4打席で初安打、翌日の第2戦ではタイムリーを放つも直後に右太ももの張りで途中交代している。危機感を抱えながらようやく掴んだチャンス、故障の前に自己申告しろというのも酷な話だ。なお同日の神宮球場では、昨オフに巨人から金銭トレードで阪神に移籍した、93年組のひとり山本泰寛が「8番遊撃」で先発出場。2安打を放ちチームの連勝に貢献した。もう理想じゃなく、現実を見据える27歳の春。横一線で笑っていた青春の日々は終わり、着るユニフォームは変わったが、それぞれの野球人生は続いていく。

「亀井(38歳)や梶谷(32歳)のツッパリはマジだ」

 さて、開幕シリーズは巨人が2勝1分けで終えたが、もちろん目立ったのは93年組だけではない。38歳の亀井善行が開幕戦で代打サヨナラ弾を放ち、32歳の梶谷隆幸が2戦目に移籍後初安打となる満塁アーチ、3戦目には貴重な同点打を放った。偉大なる矢沢永吉は自著『アー・ユー・ハッピー?』(角川文庫)の中でこう言っている。「おじさんのツッパリっていうのはマジだ。命をかけている。ダメだったからといって、知らん顔して逃げるわけにはいかない」と。これを巨人目線で訳すと「亀井や梶谷のツッパリはマジだ。命をかけてポジションを死守している」となる。新天地のレギュラーとして、またはひと振りで勝負を決める代打の切り札として、今日もしぶとく試合に出続ける男たち。

 これがプロ野球の面白さでもある。10代や20代の若者も、30代や40代のおじさんも同じ土俵で戦う。同世代で青春を懸けて戦うのが学生野球なら、人生を懸けてしのぎを削るのがプロ野球なのである。

「今度は俺たちの時代だ」とか「まだ若い連中には負けない」なんてグラウンドで繰り広げられる世代闘争の数々。見る側は時にそこに己の人生を乗っけるわけだ。

 27歳の恍惚と不安、38歳の意地と誇り――。

 今シーズンも野球ファンは、球場でもうひとつの人生を生きている。

 See you baseball freak……

(写真=中溝康隆)

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