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捕手→レフト→ショート「甲子園まで半年で大胆コンバート」 京都国際高校、“異色の育成”は何が違うのか?【センバツ】

posted2021/03/24 19:30

 
捕手→レフト→ショート「甲子園まで半年で大胆コンバート」 京都国際高校、“異色の育成”は何が違うのか?【センバツ】<Number Web> photograph by KYODO

7回表京都国際1死満塁、1番武田侑大(ショート)が中堅に走者一掃の三塁打を放つ。武田は捕手として入部し、昨秋はレフトを守っていた

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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 初出場で初勝利。

 韓国系民族学校の系譜を持つチームの嬉しい1勝。さぞ初々しいインタビューが始まるかと思ったら、岩田稔(阪神)が大学の同級生だという若き指揮官・小牧憲継の言葉はなかなか厳しいところから始まった。

「先発した森下瑠大が投げても、打ってもあそこまで状態が悪いのは初めてだったので、ゲームプランが崩れてしまった。その中でも、それを全員の力で耐えて粘ってひっくり返してくれたなと思います」

 いきなり大黒柱のエースで4番・森下のパフォーマンスについて語る。いかに京都国際が選手の「個」に力を入れているかがわかる。昨年は育成枠ながら2人の選手をプロに送り出した。2019年には上野響平(日ハム)、それ以前には曽根海星(広島)を育て上げるなど、育成に特化したクラブが目指すところのようだ。

捕手→レフト→ショート「過去のポジションにとらわれない」

 現チームづくりでまず驚いたのが遊撃手の武田侑大だ。捕手として入部し昨秋は左翼を守った武田をこのセンバツでは守備の要の一つ遊撃手として抜擢しているのだ。この大胆な起用はなかなかできるものではない。

 ところが小牧はさも当然のように、こう答えるのだった。

「どんな場面でもビビらない。ボールに向かっていけるので、武田をショートにしました。いろいろな選手を実戦で使っていく中で、一番結果を出してミスもなかったのが武田だった。だから、(今大会から)彼に賭けました」

 中学時代など過去のポジションにとらわれた起用をするのではなく、選手のポテンシャルによって最も生きる居場所を探していく。選手の成長を見据えながらの起用法は育成によほどの自信がないとできないことだろう。

 小牧はさらに続ける。

「武田は身体能力が高いですし、運動能力もある。ビビることなく攻めた守備ができる。バッティングでも振っていける選手です。これからもショートで大きく育てていきたいと思います。今後は膝を柔らかく使う、ダッシュ力を身につけることができたら、バッティングにも生かせると思う。彼が長く野球を続けていくためには必要な要素かなと思います」

「昨秋は8個盗塁を許した」→二塁送球1.91秒

 個性を生かしたのは武田だけではない。

 この日、10回に決勝タイムリーを放ち、守備面では盗塁阻止を一つ、送りバントの封殺も見せた捕手の中川勇斗も際立つ個性を見せた選手だった。

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