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「ボールをストライクにしてくれ…ではない」元チームメイト斎藤隆が解説する田中将大“フレーミング発言”の真意
text by
中村計Kei Nakamura
photograph bySankei Shimbun
posted2021/03/27 17:03
2013年のソフトバンク戦。斎藤隆からウイニングボールを受け取り、ハグで祝福される田中将大
斎藤 フレーミングは、日本でいうキャッチングのことだと思うんですけど。ただ、キャッチング技術に関して言えば、日本人の方がうまいんじゃないかな。ミットもいい革を使っているし、見やすいようきれいにカラーリングされている。そこへ行くと、アメリカは、マイナーとかだと、何色とも表現できないような色になってしまったミットを使っていて、捕ると埃が立つような感じでしたから。それ、本当にキャッチャーミットなの? みたいな。
――記事によっては「フレーミングとは、ボールであってもストライクにする技術」みたいな解釈をしていて、むしろ、アメリカではミットを動かしたら審判の心証を害するので絶対にしてはいけないと思っていたので、少し驚いたのですが。せっかく日本でもミットは動かすべきではないという文化が浸透してきたのに、本当はアメリカでは動かしていたのか、と。結局のところ、どっちなのですか。
斎藤 いやいや、田中が言いたいのは、ミットを動かして、ボールをストライクにしてくれということではないですよ。田中がそんなことを言うはずがない。そうではなくて、捕ったところでミットを止めてくれ、ということだと思います。たとえば、低めのボールを捕球するとき、負けて欲しくないんですよ。ミットを下げて欲しくない。高めのボールも勢いに押されて浮かさずに、しっかり押さえ込んで欲しい。その技術をフレーミングと言っているんだと思う。
――要するにボールをストライクにするのではなく、ストライクをボールにしてしまうようなミットの「ブレ」に気をつけてくれ、ということですよね。
斎藤 僕はそう思います。低めのキャッチングって、特に手足の長いキャッチャーは、難しいんですよ。楽天だと、下妻(貴寛)とかね。特に田中のボールは低めでも重いし、勢いがあるので、なおさら大変だと思います。
ただ、キャッチャーに関しては、田中にとっても日本に帰ってきたことは好材料なんじゃないかな。ヤンキースは打力優先でキャッチャーを起用していたので、田中もちょっと苦労していたと思うんです。思った通りのサインをなかなか出してもらえずにいた。日本にいた時、あんなに何回も首を振ってなかったと思うんですよ。サイン交換に時間をかけると集中力が削がれて、けっこう打たれる。田中もよくそんなシーンを見かけました。田中のピッチングを見るたびに、今日も首振ってるな、苦労してんなみたいに思っていたんです。日本なら、そのあたりの意思疎通はもっとスムーズになるんじゃないかな。
――今年、どれぐらい勝つんでしょうね。2013年に打ち立てた24勝0敗という大金字塔があるので、少々の好成績では、これくらいは当たり前だみたいに思われるかもしれません。それにしても未だに信じられない記録です。
斎藤 無敗のピッチャーなんて見たのは、後にも先にも田中だけですよ。彼こそは生ける伝説です。その伝説を見られるだけでも、楽しみですね。
(【前回を読む】「イチローや松井が例外だったんですよ」MLBでフロントを経験、斎藤隆が明かす“米国で獲得リストに挙がった日本人野手の名前” へ)
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