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「ボールをストライクにしてくれ…ではない」元チームメイト斎藤隆が解説する田中将大“フレーミング発言”の真意
posted2021/03/27 17:03
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Sankei Shimbun
「日本の夏の湿度は、やっぱり異常です」
――楽天の田中(将大)が日本に戻ってきて、今、非常に盛り上がっています。斎藤さんもメジャーで7年間プレーしたあと、楽天で3年間プレーしていますが、日本に戻って苦労されたことはあるのでしょうか。
斎藤 地方球場とかだと、極端にマウンドが低い場合がある。土も柔らかい。メジャーのマウンドはだいたい硬くて高いので、そういうところだと投げにくいと感じるかもしれません。あと、向こうのボールに慣れてしまうと、今度は、日本のボールに違和感を感じてしまうんです。僕の場合、日本のボールの方が柔らかく感じた。指先に力を入れてボールをリリースしようとした時、その力が吸収されてしまう感覚があった。あとは、湿度ですね。フロリダの湿度もなかなかのものでしたけど、日本の夏の湿度は、やっぱり異常です。僕が日本に戻ってきたのは42歳の時ですから、おじさんの体にはきつかった。その点、田中はまだまだ体力も充実しているので大丈夫だと思いますけど。
――今まで日本に戻ってきたメジャーリーガーと田中は、年齢もそうだし、プレーヤーとしての充実度が違いますもんね。まだ現役バリバリ。
斎藤 だから、むしろ、そのプレッシャーはあるかもしれませんね。打たれる怖さというか、打たれた時のショックは大きいだろうなと思います。とんでもなく大きな期待をされているわけですから。もちろん、若いぶん、ボールもまだまだ行くんでしょうけど。僕は、本当はアメリカで野球を終えたかったんです。でも僕が仙台出身ということもあって、楽天だけ、ずっと見ていてくれたんですよ。その情にほだされて帰ってきてしまったんですけど、ピークをとうに過ぎているのに日本でまだ野球をするなんて、投げられなくなったおじさんが恥を晒しに行くようなもんだと思っていました。ただ、つくづく運がよかったと思うのですが、帰国した年、田中が24勝0敗という不敗神話を作って、楽天が日本一になったんです。あの優勝で、そうした後ろめたさは、きれいさっぱりなくなりました。
「もう帰ってこないでくれ」
――斎藤さんも日本に帰るなら古巣の横浜に戻りたいみたいな思いはなかったのですか。