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ベッカム&ギグスら“奇跡の6人”からスパイク泥棒まで… マンU生え抜きに見る重圧に打ち克つ「人生訓」とは
posted2021/03/16 17:00
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph by
Getty Images
「若造どもだけで何ができるっていうんだ!?」
その昔にリバプールで活躍し、テレビ番組の人気解説者として名を馳せていたアラン・ハンセンは、マンチェスター・ユナイテッドに対して辛辣だった。
ファーガソンのひな鳥たち
1990年代前期の話である。当時ユナイテッドを率いていたアレックス・ファーガソンは、下部組織出身の若者を積極的に起用した。
ライアン・ギグス、ポール・スコールズ、デイビッド・ベッカム、ニッキー・バット、ギャリーとフィルのネビル兄弟。後に“ファギーズ・フレッジリングス”(ファーガソンのひな鳥たち)と呼ばれ、ユナイテッドに数多くのタイトルをもたらしたヒーローである。
6人もの下部組織出身者がトップチームで活躍した例は少ない。もちろん、エリック・カントナ、ピーター・シュマイケル、ロイ・キーンといった外部の血の助けは必要だった。
しかしファーガソンは、幼い頃から“ユナイテッドの哲学”を叩き込まれた若者たちにチームを託した。このプランが奏功したことは、改めて言うまでもない。
ファギー・チルドレンが継ぐもの
下部組織出身ではないものの、オーレ・グンナー・スールシャール監督はベッカム世代とともに長く過ごしたため、ファーガソンのチーム創りを熟知している。
マーカス・ラッシュフォード、メイソン・グリーンウッド、スコット・マクトミネイ、ディーン・ヘンダーソン、アクセル・トゥアンゼベなど、下部組織出身者を登用しているのは、恩師の流れを引き継ごうとしているからだろう。よくよく考えてみると、ポール・ポグバもユナイテッド・ユースが生み出した稀有なタレントだ。
“ベッカム世代”以後は……
ただ、下部組織出身者のすべてが大成するわけではない。
チャンピオンズリーグ、プレミアリーグ、FAカップのトレブル(三冠)を達成した1998-99シーズンから3~4年は、ベッカム世代を軸にそこそこの成績を収めているが、若手の台頭はなかった。リオ・ファーディナンド、クリスティアーノ・ロナウド、ウェイン・ルーニーなど、移籍市場のトップランカーに巨額を投じ、チーム力を維持している。