欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
ベッカム&ギグスら“奇跡の6人”からスパイク泥棒まで… マンU生え抜きに見る重圧に打ち克つ「人生訓」とは
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2021/03/16 17:00
ユース出身選手としてクラブを牽引するマーカス・ラッシュフォード(右)とスコット・マクトミネイ(左)。前者は10番を纏い、後者は次期キャプテン候補に名が挙がるまで成長を遂げた
ファーガソン自ら「ユナイテッド史上最強」と自負する2007-08シーズンのチームも、前述した3選手に加え、カルロス・テベス、マイケル・キャリック、パトリス・エブラ、ネマニャ・ビディッチ、エドウィン・ファンデルサールと、移籍組が中心だった。
ベッカム世代以降、ユースからトップチームに昇格して定位置をつかんだのはダレン・フレッチャーだけと言っても過言ではない。ダニー・ウェルベックはストライカーとして3~4番手、ウェズ・ブラウン、ジョン・オシェイ、ジョニー・エバンズなども、活躍したシーズンは短かった。
また、トム・クレバリー、ファビオとラファエウのダ・シルバ兄弟、フェデリコ・マケダ、アドナン・ヤヌザイなどは、志半ばでユナイテッドを後にした。
ポグバの同期でもあるジェシー・リンガードは、今年の1月にウェストハムへ移籍して早速ゴールを決めるなど溌剌としている。彼らはユナイテッドならではのプレッシャーに苛まれていたのかもしれない。
さらに、“ポグバを凌ぐ逸材” とまで言われたラベル・モリソンは、遅刻や無断欠席を繰り返した。
挙句の果てには、ルーニーとファーディナンドのスパイクシューズを盗んで売りさばくという犯罪行為にまで及んだ。2012年、ファーガソンによって追放されたのは至極当然だ。モリソンは誰もが羨む自身の才能に気づけず、その人生にみずから大きな傷をつけたのである。
名キャプテンの金言
ここで、ファギーズ・フレッジリングスの1人、名キャプテンでありクレバーなライトバックとしても鳴らしたG・ネビルのコメントに耳を傾けてみよう。
「最短距離で頂点に登りつめた選手は、ほんのわずかしかいない。成功への道のりは人によって異なるのだから、自分なりのルートで頂点を目指すべきだ」
「自らのすべてをフットボールに費やせば後悔しない。誰よりも努力し、才能で上回る者を追い越してやれ」
「初心を忘れるな。フットボールはカネや名声、女性、高級車などを手に入れる手段ではない」
「ユナイテッドで成功したければ強い個性とパーソナリティを身につけろ。責任感を持ち、他人をあてにしたり、偶然に頼ったりしてはいけない」
フットボールやユナイテッドで成功するための条件ではなく、もはや“人生訓” だ。厳しい社会で生き残るためにはどうすべきか、どうあるべきか。G・ネビルの発言は考えさせられる部分が多い。