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「Jリーグで働きたい」がバズったけど…女性マネージャーが持った違和感って? 早大ア式蹴球部の部員日記が面白い 

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森迫雄介

森迫雄介Yusuke Morisako

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photograph byWaseda Sports

posted2021/03/09 17:02

「Jリーグで働きたい」がバズったけど…女性マネージャーが持った違和感って? 早大ア式蹴球部の部員日記が面白い<Number Web> photograph by Waseda Sports

今季からVファーレン長崎に所属する鍬先祐弥や、今後の活躍が期待される西堂久俊ら選手やチームスタッフ全員で「部員ブログリレー」を執筆している

ア式には「裏方」的なマネージャー像はない

 せっかくの機会なので、マネージャーの視点からア式とはどのような組織であるのかを伺ってみると、こちらの先入観を打破する答えが返ってきた。

「ア式はマネージャーがマネージャーっぽくないので、今まで自分たちが裏方だと思ったことがないんですよ。もちろん水汲みなどもしますが、グリッドはマネージャーがどこに配置するかを考えて組み立てていますし、練習中も基本的に選手たちと一緒にグラウンドに立っていることが多いです。

 『サッカーだけをやればいいわけではない』という意識が圧倒的に強いのもあって、ア式は本業以外で行動している人を評価してくれます。逆に与えられたことをこなしているだけなら『お前何しているの?』と言われるような環境です。何か新しいものを探して常に挑戦し続けなければいけない状況は今まで経験したことがありませんでしたが、おかげで自分から行動しなければ人に認められることも成長することもないと思うようになりました」

 「裏方」や「縁の下の力持ち」といった黒子役を表す言葉と結び付けられがちな従来のマネージャー像は、少なくともア式には当てはまらない。選手との間にあるのは、共に部員であるという意識。「選手」や「マネージャー」といった役職名を超えて、目標達成に貢献するという強烈な当事者意識が垣間見えた気がした。

 西堂や鍬先もしかりだ。プロになる、あるいはプロを目指すプレーヤーである以前に「日本をリードする存在」へと歩みを進める組織の一員であることの自覚は随所に見られた。ピッチの外を見渡せる視点を持ち合わせることが、ピッチ内の成長を呼ぶ。2人に限らず、最近のア式出身者からはこの意識が強く感じられる。

「名門大学のサッカー部」の顔が見えてくる

 2020年10月から続いてきた今年度の部員日記リレーも、先日更新された田中雄大新主将の更新をもって終了した。

 一般的な認識として、ア式はこれまで多くのJリーガーを輩出してきた「名門大学のサッカー部」であり、特別な存在のように思える。その認識も完全な誤りではないが、それ以前に彼らは様々なバックグラウンドを持った大学生だ。成し遂げたい目標も違えば人生設計も人それぞれである。

「ありのままをさらけ出せ」というテーマなだけあって、部員日記からは書いた人の数だけ多くのものが見えてくる。多様性と共感については先に記した通りだが、筆者もご多分に漏れず、林さんの思惑通り部員日記を通じて多くの共感を覚えさせてもらった。

 これまで継続的に読んできた方々はもちろんのこと、今日初めて部員日記の存在を知った方もぜひ読んでいただきたい。部員日記を読み進めていくうちに、「名門大学のサッカー部の誰か」という曖昧な存在が、徐々にはっきりとした輪郭を持つ存在へと昇華する感覚を味わえるはずだ。
前編も関連記事からご覧になれます>

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