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「Jリーグで働きたい」がバズったけど…女性マネージャーが持った違和感って? 早大ア式蹴球部の部員日記が面白い
text by
森迫雄介Yusuke Morisako
photograph byWaseda Sports
posted2021/03/09 17:02
今季からVファーレン長崎に所属する鍬先祐弥や、今後の活躍が期待される西堂久俊ら選手やチームスタッフ全員で「部員ブログリレー」を執筆している
「最初は全く別のテーマで書くことを考えていましたが、部員日記で『僕はマリノスに入りたい』と書いた後輩マネージャーが実際にマリノスの方から反応をもらっている のを見て、『部員日記を使ってチャンスをつかもうとするのもありかもしれない』と思い、方針を転換しました」(菊地)
鹿島から招待を受けたほどの反響
これもコミュニケーションが生み出したものだと言えるだろう。後輩がどのような部員日記を書いて、実際にどの方面からどういう反応を得たのか。それを目の当たりにしたことで、思いの丈を自分の言葉で綴る決意が固まった。
その思いで書かれた部員日記が想定以上に拡散されたことで、多方面から様々な反応が本人に届いた。
外池監督が言う「アウトプットはインプットのために」に照らし合わせれば、部員日記というアウトプットを通じて幾千もの反応を外部から引き出したことになる。その中には、すでにサッカー界で活躍している人物も含まれており、実際にJ1鹿島アントラーズ代表取締役の小泉文明氏から直接スタジアムへ招待されたのだとか。チャンスを掴むという思いはもちろん、より質の高いインプットを得られた実感は本人にもあるようだ。
「色々な方とお話しすることができたので自分の疑問点を大人の方に投げかけるきっかけになりました。自分が見ていたものの幅の狭さを見せつけられましたし、夢を明確に書いたことで、確信どころか『自分がここまでやってきたことは本当に正解なのか』という不安が出て、疑問が増えました」
見えるものが多くなったからこそ、今までにはなかった視点から新たな「分からないこと」が現れてくる。不安を感じたのも疑問が増えたことも、一気に質の高いインプットをする機会を引き寄せたことで、視野がより広がったことの裏返しとも捉えられる。
「あの部員日記が私の第一印象になるのは」
「それ自体には全く負の感情はない」
一方で、菊地さんもそう前置きしつつも「あの部員日記の存在が、自分の存在より先行してしまっていること自体には違和感がある」とも明かしたのが興味深かった。
「家族や友達など、自分のことを知っている人たちに読んでもらいたいという思いで書いたので、あの部員日記が私の第一印象になってしまうのは少し嫌かなという気持ちはします(笑)」
バズは想定外であり、自分はまだ何者でもない――。菊地さんが見せた戸惑いは、自分の現在地をしっかりと把握しているからこそだろう。