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「Jリーグで働きたい」がバズったけど…女性マネージャーが持った違和感って? 早大ア式蹴球部の部員日記が面白い
text by
森迫雄介Yusuke Morisako
photograph byWaseda Sports
posted2021/03/09 17:02
今季からVファーレン長崎に所属する鍬先祐弥や、今後の活躍が期待される西堂久俊ら選手やチームスタッフ全員で「部員ブログリレー」を執筆している
「チームのために戦える選手が良い文章を書く」
林さん曰く「チームのために戦うとか、与えられた役割を全うするといった姿勢が見えるようになった選手は良い文章を書くようになっているので、部員日記とピッチ上のプレーはリンクしていると思います」とのことだが、西堂も自身の思考回路の変化がピッチ上での充実ぶりにつながっている実感はあるようだ。
「僕自身、(シーズンオフの)2月の対談時から今にかけての思考の変化は強く感じています。今年の4年生の発言や振る舞いの影響を受けて4年生のために頑張りたいという思いが強くなってからは、かつてのような自分本位のプレーではなく『誰かのために』という思考や行動が軸となり、原動力になりました。この心持ちで臨めていることが、ピッチ上の結果や好調ぶりを支えてくれていると思います」(西堂)
実際、西堂は3月のデンソーカップチャレンジサッカーでベストイレブンに選ばれるなど、進境著しいといっていいだろう。そんな西堂と普段から話す仲だという同学年の菊地彩花マネージャーも、西堂の変化を感じ取っていたと証言する。
「ミーティング等での発言内容が昔と今では全然違っています。今年のヒサ(西堂)の部員日記を読んだ時に『以前はそんなこと言ってなかったよな』と思って、2月に行われた対談も読みました。すると改めて、こんなに変わっていたのかと。他人の私がヒサの部員日記を読むことで、ヒサの気持ちになりながら彼の成長を客観視できました」
節目節目で当時の思考や価値観を書き記すことは、文章にマイルストーンとしての役割を待たせる。そのマイルストーンは、書いた本人にはするべき行動や振る舞いを再認識する装置として、他者には共感を呼ぶ成長物語として機能するようになる。再び、西堂の部員日記からの引用だ。
「高校時代の監督の言葉になりますが、『サッカーがなくなった後に何が残るのか。人としての部分が問われている』。それが結局プレーヤーとしての成長にも繋がるんだなと、今になって刺さる。(中略)こう思えただけでも僕はもうア式に来てよかったと言えます 」
「Jリーグで働きたい」と書いた菊地さん
ちなみに、先ほど名前が挙がったマネージャーの菊地さんも部員日記を書いたのだが――もしかしたら「最近どこかで見た名前だな」と感じた読者もいらっしゃるかもしれない。
菊地さんが記した「やっぱり、私はJリーグで働きたい」と題された部員日記は、自身が歩んできた足跡と夢を赤裸々に語った内容だった。これが好評を呼び、俗に言う「バズ状態」となった。
そんな菊地さんにも部員日記を書くに至った経緯を聞いてみた。実は、菊地さんは当初、Jリーグで働くという夢について書くつもりはなかったそうだ。テーマを変更した契機は、後輩の部員日記にあったと明かす。