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突然のオファーに「え、なんで俺?」選手権優勝、山梨学院“11番”廣澤灯喜はなぜポルトガルに行けたのか
posted2021/02/22 17:01
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Naoki Nishimura/AFLO SPORT
2月6日、山梨学院高校のMF廣澤灯喜(ひろさわ・とき)がポルトガルのポルティモネンセU-23チームへ加入することが発表された。
高校サッカー選手権で優勝、決勝戦では貴重な先制ゴールをマークした11番。注目を集めたとはいえ、かつU-23チームとはいえ、まさか海外クラブから正式オファーが舞い込むとは驚きだった。
すでに系列の山梨学院大学への進学が決まっていた廣澤が、なぜ急転直下でポルトガルへ渡ることになったのか。安西幸輝、中村航輔ら日本人選手も多く在籍することで馴染みのクラブの1つではあるが、「この話をいただいた時は、『え、なんで俺が? 本当の話なの?』と驚きと動揺しかありませんでした」と本人にとっても予想外の展開だった。
選手権をチェックしたポルティモネンセ
オファーの一報が届いたのは青森山田との決勝戦を終えた1週間後のこと。U-23世代の選手を探していたポルティモネンセが、選手権で躍動する小柄な「11番」に目をつけたことをきっかけに、代理人を通じて廣澤のもとに話が舞い込んできた。
現在の移籍市場では、世界の主要リーグの試合だけではなく、育成年代の試合を見ることができるスカウト用のアプリケーションが活発に利用されている。日本で言えば、そこに高円宮杯プレミアリーグの数試合、高校サッカー選手権の試合が含まれており、日本の高校生たちも常に世界の目に晒されている。獲得したい条件に合う選手がいれば、すぐにチェックできる環境が世界中に広がっているのだ。
ただ、廣澤がいた山梨学院はプリンスリーグ関東に所属している。もし山梨学院が選手権に出場していなかったら、もしくは決勝まで勝ち上がっていなかったら、目に留まることがなかった可能性も大いにある。ポルティモネンセ側がU-23世代のドリブラーを探していたこと、日本人にゆかりのあるクラブで幾多のパイプがあったこと、そして何より廣澤自身が選手権でスカウトやクラブ関係者を唸らせるプレーを披露したこと。この3つのピースがそろったことで劇的に人生が変わった。
「本当にどこかで誰かが見てくれているんだなと思いました。こんなことってあるんだなと」