審判だけが知っているBACK NUMBER
<私が裁いた名勝負>やがて彼らが雪に順応していくのがわかりました。
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
posted2021/01/31 07:00
布瀬直次さん。
語り継がれる名勝負をその演者のひとり、審判が振り返る。彼しか知らない新たな景色が見えてくる。
1998年 高校サッカー選手権決勝
東福岡 2対1 帝京
1月8日/国立競技場
本山、金古らを擁し史上初の三冠を狙う東福岡と、中田、木島良輔を中心に総体決勝の雪辱を誓った帝京が対戦。21分、ロングパスに帝京・金杉が合わせて先制すると、3分後に右の仕掛けからゴール前の榎下が同点弾。後半早々には本山→青柳とつないで逆転、東福岡が優勝した。
◇
「それでは、高校選手権決勝の審判に行ってまいります」
1998年1月8日、埼玉県立狭山高校の教員だった私は、3学期の始業式を終えて、国立競技場に向かいました。校門から見上げれば、冬晴れの真っ青な空。天気予報では大雪注意報が出ていましたが、まさか数時間後、真っ白なピッチの上で笛を吹いているとは、想像もできませんでした。