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日本人選手は本当に“メンタルが弱い”のか? スポーツ精神科医に聞く「やっぱり長谷部はすごい?」「もったいない選手は…」
posted2021/03/04 17:02
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
JMPA/JMPA/Getty Images
昔からよく言われるのが、日本人選手と外国人選手のメンタルの違いだ。
欧州のクラブでプレーする選手は「自分が」という気持ちを前面に出し、納得できないことがあれば臆することなく監督に意見する。一方、日本人は基本的におとなしく、「自分が」というよりは協調の姿勢を崩さずにプレーする。その理由として、メンタルの強さが指摘されてきたが、実際に欧州や南米などの選手と日本人選手とではメンタルに大きな差があるのだろうか?
精神科医であり、ブラインドサッカー日本代表やコンサドーレ札幌アカデミー、Real Madrid foundation football schoolなどでメンタルアドバイザーも務める木村好珠さんに「サッカー選手とメンタル」について話を聞いた(全3回の1回目/#2、#3に続く)。
サッカーにおける「メンタル」とは何か?
――そもそも「メンタル」とは、なんでしょうか?
「日本で、一般の方に『メンタルはどこにあるか?』と聞いてみると胸を指す人が多いんですが、海外では脳を指します。考えて(思考)、感じること(感情)。つまりサッカーでメンタルを考えると、ピッチ上で起こっているあらゆる状況を自分で判断して行動することが<思考>で、そのパフォーマンスで何が大事なのか、どういう気持ちでプレーに向かうのかを考えることが<感情>です。この2つはセットで、いかに均一に作用させるかが、パフォーマンスの良し悪しを左右します」
――なぜ、この2つのバランスがパフォーマンスに影響するのでしょうか?
「ジュニアユース世代で起こりがちなことですが、監督に『これをやりなさい』と厳しく言われると、自分で考えてプレーしなくなることがあります。言われた通りに何も考えずにプレーしていくうちに、今度は自分が何をしたいのか分からなくなって、感情がどんどん麻痺していく。これが思考と感情がバランスを取れていない状態です。
自分の感情をコントロールできなくなると、監督や親しい人だけでなく、SNSなどの他人の評価を気にしたり、勝敗などの外的な要素も受け入れやすくなり、プレッシャーに押しつぶされやすくなります。そこからまた焦りや過度な緊張が生まれ、プレーが委縮したり、ぎこちなくなって長所を消されていってしまうんです」
メンタルの「強い」「弱い」
――外国人選手と日本人選手のメンタルの違いについて話すとき、「外国人選手の方が強い」といったことを聞くことが多い印象ですが。
「ありますね。ただ単純にプラスの意味としての“強い”、マイナスの意味での“弱い”という違いより文化的な側面からくる特徴の違いが非常に大きいです。
レアル・マドリーのアカデミーでメンタルコーチをしている方に、『日本人はゴール前で譲ってしまう。自分がゴールを決めるという気持ちをつけさせるためにはどうしたらいいか』という質問をしたことがあるのですが、その時の現地の人の返答にすごくびっくりしたことがあって……。『何を言っているか意味がわからない』と言われてしまったんです」