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日本人選手は本当に“メンタルが弱い”のか? スポーツ精神科医に聞く「やっぱり長谷部はすごい?」「もったいない選手は…」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJMPA/JMPA/Getty Images
posted2021/03/04 17:02
左から長谷部誠、久保建英、本田圭佑
「断然クリスティアーノ・ロナウドですね。私は、アカデミーのこどもたちには、『クリロナを目指すのはいいけど、セルヒ・オラモスを目指すな』と言っています」
――なぜセルヒオ・ラモスは参考にならないんですか?
「あそこまでポジティブシンキングの人ってなかなかいないです(笑)。自分のミスも『お前だろ』って感じですよね。あれは積み重ねられた自信というより、一つの個性で、才能だと思うんです。日本では伊東純也選手が天然ポジティブ系に見えます。なかなか一からその方向を目指すのはおすすめできないです」
――では、クリスティアーノ・ロナウドが「模範とするべき」なのはなぜでしょうか?
「彼はポルトガル代表で試合に負けるたびに監督の前で号泣していて、“クライベイビー”と呼ばれるぐらい感情が素直なことで有名でした。
その一方で、筋トレや食事制限を徹底して続けていることもよく知られていることです。自分がどれだけ活躍したかということよりも自分がどれだけ努力をしているか。彼はそれをしっかり理解し、凄まじい努力で積み重ねた自信を持っている選手です。結果にこだわりがちな日本人が模範にするべき選手ですね」
メッシが代表で活躍できないのは……
――ちなみにメッシは……?
「アルゼンチン代表とバルセロナでは、プレーする際に同じメンタルで試合に臨めているようには見えないですよね。メッシのプレーは、言葉にせずとも周囲が自分を理解してくれているというのが前提になっているような気がします。特にアルゼンチン代表の時は、そうで、言葉にせずに、眉間にしわを寄せて不安な表情だけを見せます。
メッシはチームのエースですから、不安な表情はすぐさまチームメイトや監督までにも伝染していく危険性があります。負の感情はとても伝わりやすい。そういう『空気を読め』系の選手は周囲にとって非常に扱いづらいんですよ。アルゼンチン代表でなかなか彼が活躍できないのは、意外にも不安定なメンタルに原因があるかもしれませんね」
(写真=平松市聖)
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