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センバツ21世紀枠・三島南の「脱高校野球」 ICTで効率的練習+数値化、打撃フォームをスマホ撮影するワケ
text by
間淳Jun Aida
photograph byJun Takagi
posted2021/02/15 11:02
バッティング練習の動画をチェックする監督と選手。三島南の取り組みは“普通の学校”にも参考になるかもしれない
女子バレー部がプレーを録画しながら練習しているのを、稲木監督が知ったことがきっかけだった。
三島南がICTに積極的に取り組んでいるのも後押しとなっている。
2018年度からiPadとWi-Fi、それに全ての教室に黒板の代わりとなるプロジェクターを導入した。現在はiPadの数が120台まで増え、ほとんど毎日、調べ学習やグループ発表で使われている。「書いたり消したりする時間がないので効率的」と野球部員にも好評だ。
野球の裾野を広げようという地域貢献も
ICTを活用した練習が高く評価された三島南。21世紀枠に選ばれた、もう1つの大きな理由は「地域貢献活動」にある。
野球の裾野を広げようと考えた稲木監督の提案で、野球部は2014年から保育園児らを対象とした野球教室を続けている。評判は口コミで広がり、開催した回数は昨年12月までに31回。参加した子どもたちは延べ1000人を超えた。
野球教室といっても、ルールはもちろん、ボールの投げ方さえわからない園児に教えるのは簡単ではない。野球部員たちは、ここでも知恵をしぼり、工夫を凝らす。園児に親しみがあるアニメのキャラクターを紙に印刷し、木の枠に張り付けて手作りの的を作った。YouTubeで教え方の参考になりそうな動画も検索。短い言葉でわかりやすく、園児の目線で野球の楽しさを伝えた。センバツ出場が決まると、園児から激励の言葉が書かれた画用紙や応援のビデオメッセージが届いたという。「三島南で野球をやりたい」と野球部に憧れる子どもたちも増えている。
教えの根底に「考え方の成長・成熟」
ICTを使った練習に、子どもたちへの野球教室。稲木監督の教えの根底には「考え方の成長・成熟」がある。
勝利を目指すのはもちろんだが、それが全てではない。野球は人間形成や自己実現の教材であって、「結果以上に、どうやって勝つかプロセスを考えることが大切」と説く。学業と野球を両立するためには、どうすればいいのか。与えられた時間、練習環境でどうやって最大限の結果を出すのか。日ごろの考える習慣が試合での高いパフォーマンスにつながり、さらにはグラウンドを離れても高い人間力を発揮できる。