甲子園の風BACK NUMBER
センバツ21世紀枠・三島南の「脱高校野球」 ICTで効率的練習+数値化、打撃フォームをスマホ撮影するワケ
text by
間淳Jun Aida
photograph byJun Takagi
posted2021/02/15 11:02
バッティング練習の動画をチェックする監督と選手。三島南の取り組みは“普通の学校”にも参考になるかもしれない
フリー打撃のケージ近くからは、女子マネージャーの声が聞こえてくる。
「131」、「135」。
ティー打撃をする選手にスマートフォンを向けて、バットを振るごとに数字を伝える。計測しているのは、スイングスピード。速い選手は155キロを記録するという。スイングスピードを計る目的は、主に2つある。
1つは、バットを強く振ることを体と頭に植え付けるため。素振りのスピードも計測し、ティー打撃でボールを打つ時のスイングと速さに違いが出ないよう意識づけすることで、試合でも自然とフルスイングできる。伊藤主将は昨年初めて計測したときは120キロ台後半だったが、今では140キロ近いスピードを出す。実際に打球の飛距離が伸び「試合でもボールに当てにいくスイングが少なくなった。打球の質が変わった」と変化を感じている。
もう1つの理由は、数値化だ。
目に見える数字で表すと、具体的な目標を立てやすい。さらに、自分の進歩が客観的にわかる。ゲーム性もあるため、単調になりがちな素振りやティー打撃に積極的に取り組んだり、目的意識を持ったりもできる。三島南では、それぞれの選手が数字を把握するだけでなく、ランキングにしている。チーム内での自分の順位やライバルの成長がはっきり示され、チーム内競争にもつながっている。
高校の教室も練習場所にできる遊び心
室内練習場のない三島南は、雨が降ると高校の教室も練習場所にしている。スイングスピードはバットにセンサーをつければ、いつでもどこでも計れるので、教室でも使っている。その際にも、工夫と遊び心が。YouTubeにアップされているプロ野球選手の映像を教室にあるプロジェクターに映し出し、投球に合わせて素振り。選手自ら考える習慣が身についている。
ちなみに伊藤主将は自宅に帰ってからもアプリを使って、試合のときのスイングと比較しながら素振りしているという。
こうしたICT(情報通信技術)を活用した練習は、3年ほど前から始まった。