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羽生結弦の名プログラム『SEIMEI』 作曲家に聞く「羽生選手が演じると聞いてどう思いましたか?」 

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いとうやまね

いとうやまねYamane Ito

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photograph byYukihito Taguchi

posted2021/01/25 17:01

羽生結弦の名プログラム『SEIMEI』 作曲家に聞く「羽生選手が演じると聞いてどう思いましたか?」<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

昨季はシーズン途中でフリーを『SEIMEI』に変更。四大陸選手権で優勝し、スーパースラムを達成した

 日本だから和楽器とか、インドならシタール、中国なら馬頭琴。それも分かるが、音楽はその垣根を超えていいものだ、と梅林さんは語る。尺八も琴も使うけれど、同じところにギリシャの楽器を使ってもいいわけだ。発想の扉はいつもオープンにしているという。それを踏まえて、しばし『SEIMEI』に耳を澄ませると、何か新しい音の発見があるかもしれない。

フィギュアスケートでの曲の扱われ方に抵抗はない?

 作曲家への取材でたまに聞くことがあるのだが、フィギュアスケートでの曲の扱われ方に抵抗はないかと。競技上、短い時間内に演技のメリハリを持たせなければならないので、原曲に多くの手が加わることになる。あまりよく思わない作曲家もいないわけではない。

「あくまでも作曲家本人からするとですが、あああ……と思うところはあります。ただ、これはスケーティングが主体で、使用する場が違うし、私自身がそういう場の人間ではないので、それに対しては何も言うつもりはありません」

 ベートーベンの曲を編集したってベートーベンに文句は言えないし、お伺いを立てるわけにはいきませんよね、と笑う。「音楽が一人歩きすること」については、意外なほどに肯定的だ。

「音楽は囲ってしまうよりも、どんどんいろんな人と関わらせるほうがいいと考えています。自分の知らないところで変わっていくのが逆にいいんじゃないかな。作曲したものがどう使われたとか、そういう細かいことじゃなくて、何より自分が過去にやったことを、この人(羽生選手)がもう一度活(生)かしてくれた。そこが嬉しいよね」

 あまりフィギュアをご覧になられない梅林さんに、お作りになられた『LOVERS』の劇中歌は多くの選手に使われていますよ、と話すと嬉しそうに目を細めた。そして今季、フリーで『夢二のテーマ』を演じている川畑和愛の話には、「へぇーー本当に? 日本人選手、嬉しいね。あまり相手にしてくれないからさ日本の人」と、おどけながらとびきりの笑顔を返してくれた。

Number1019号「銀盤の誓い」では、『レット・ミー・エンターテイン・ユー』『天と地と』の2つの羽生結弦の新プログラムを、本田武史さんによる技術解説、矢野桂一さんによる楽曲解説などで詳細に深堀り。全16Pのブックインブック「アーティストが語る羽生結弦歴代プログラムの美」も収録。ぜひご一読下さい。

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