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羽生結弦の名プログラム『SEIMEI』 作曲家に聞く「羽生選手が演じると聞いてどう思いましたか?」

posted2021/01/25 17:01

 
羽生結弦の名プログラム『SEIMEI』 作曲家に聞く「羽生選手が演じると聞いてどう思いましたか?」<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

昨季はシーズン途中でフリーを『SEIMEI』に変更。四大陸選手権で優勝し、スーパースラムを達成した

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いとうやまね

いとうやまねYamane Ito

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Yukihito Taguchi

 過去3シーズン、羽生結弦がフリープログラムで使用した『SEIMEI』。2018年平昌五輪で金メダルを獲得した際も使われた楽曲は、映画『陰陽師』『陰陽師II』のオリジナル・サウンドトラックとして、作曲家、音楽プロデューサーの梅林茂氏によって生み出された。

「梅林さんが音楽家として海外に打って出る時に、 “和”というものの強みであったり、逆に弱点もあると思うんです。そのあたりどう捉えられているのかをお聞かせ願えれば。それは“和”のプログラムをもって世界と戦っている羽生選手自身にも通ずるものがあるのではと思うんです」

 こんな問いかけからスタートした、作曲家・梅林茂さんへの『SEIMEI』についての取材は、スポーツ、音楽、文化論を超えて、濃厚かつ楽しい時間になった。答えの一端はNumber1019号ブックインブック<アーティストが語る羽生結弦歴代プログラムの美>内の記事にまとめてあるので、ぜひ読んでみてほしい。ここでは、誌面に入りきらなかった話をご紹介したい。

『SEIMEI』のベースにある“日本的”とは?

「海外の仕事が増えて、日本人としてのアイデンティティはますます強くなりました。いや、アイデンティティというよりは、自分が大切にしなければいけないものを海外の人が気づかせてくれる。それが大きいですね」

 梅林さんの言葉は、海外に生活拠点を置く人や、仕事や学業などで長く日本を離れている人に共通する感覚かもしれない。10代でトロントに渡った羽生にも思い当たる節があるはずだ。

「例えばですが、アメリカ人がいて、イギリス人がいて、アラビア人や中国人がいて、日本人もいる。そこで『はい、赤を持ってきてください』と言うと、みんな違う赤を持ってくるんですよ。それって、実はすごく大事なことなんです。我々としては『こんな赤もありますよ』っていうのを世界にどう伝えられるか、だと思うんです」

 ここでいう“違い”こそが、普段の生活では気が付かない、我々の内なるものの正体で、長い年月をかけてDNAに蓄えられた記憶の仕業なのかもしれない。羽生の表現の端々にもおそらく表れているはずだ。

「和」を意識するあまりに陥りやすい罠もある。これは発注者側のリクエストの話だが、ともすれば“フジヤマ”“ゲイシャ”になりかねない。

「あちらが言う“日本的”というのは、お寿司屋さんでお寿司を食べることなので、こちらとしては、そうじゃないことが必ず出来る、と思い続けてやっています。それを教えてくれたのがビートルズ。『ノルウェーの森』のイントロでジョージ・ハリスンが使った楽器はインドのシタールでしょ。Norwegianな楽器でもないしインドでの出来事を歌っているわけでもない。音作りに既成概念がないんです。それがすごく大事」

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