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【かなり早めのドラ1予想】投手編・最注目ベスト5 「則本以上の逸材も?」“高校生投手”が3人もランクイン
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2021/01/14 17:03
2021年のドラフト目玉になりそうなピッチャー・関戸康介(大阪桐蔭・178cm81kg・右投右打)
(1)「高校生でもプロ即戦力」関戸康介(大阪桐蔭)
昨秋の近畿大会で、154キロまで出してみせた関戸康介。
150キロ台をマークするのが1年ほど早かったような気もするが、彼の場合は、力任せに投げた「154キロ」じゃないのが救いだ。明徳義塾中当時から中学軟式で鳴らし、全国大会で140キロ台の速球で注目されていた。
軟式だったおかげで、ボールを強く握り過ぎないのがいい。フワッと握って、リリースの一瞬にだけ指先で猛烈なスピンをかけられる。昨秋ドラフトで4球団の1位指名が重複した早稲田大・早川隆久(楽天)が、まさにそうしたメカニズムで「生きたストレート」を投げていた。
ボールの回転数を測る機器で計測したら、おそらく2400回転ぐらいはマークするだろう。「2300」あたりが、プロとアマの球質の分かれ目と言われているが、間違いなく「水準以上」である。頻繁にストライクゾーンで空振りを奪えている事実が、これを証明している。
その攻略困難な快速球と同じか、それ以上に猛烈な腕の振りから投げ込んでくるスライダーの小さく鋭い変化とタテの落差とチェンジアップ効果抜群のフォーク。どちらも構えたミットにきちんと決められる。高校生でも、即戦力に近いタイプだ。
足元を強襲された打球を追った途中から一転、一塁ベースカバーに動きを変えられる一瞬の判断力からは、センスも伝わってくる。新人で開幕投手を務めた則本昂大(楽天)の三重中京大当時の力量を、高校生ですでに超えていると見る。
(2)「大阪桐蔭相手に楽しそうだった」達孝太(天理)
今から1年ほど前。公式戦デビューを秋の近畿大会決勝の先発で飾った達孝太。
相手は、天下の大阪桐蔭だった。公式戦初登板の1年生にずいぶん乱暴なことを……と心配したが、8回に3点を奪われたが7回までは強打線を1点に抑え、その投げっぷりが素晴らしかった。
右打者にも左打者にも、足元、胸元をドーンと突けるコントロールがすごい。140キロ前後でも、1年秋に190cmから投げ下ろすオーバーハンドからこの球筋を作れる投手など、そうはいない。「ダルビッシュ」だと思った。
投げるボールも思いきりの良さも、意外性抜群の投球精度にも驚いたが、何よりいいのが、達孝太が投げる表情、態度の良さだ。
泣く子も黙る全国有数の強豪相手に、ひるむこともなく、どうしてこんなに嬉しそうに楽しそうに、全身を躍動させることができるのか。その「メンタリティー」が何よりの将来性だ。
良い所をそのまま残して、1年が経った。
打者寄りのリリースポイントで指のかかりが抜群。単にボールを投げる……のではなく、リリースでボールを押し込んで「投げ込める」から、低めへの角度が素晴らしい。
高校2年の段階で、これだけ高く抜けるボールのない長身のオーバーハンドもなかなかいない。タテのスライダー、チェンジアップもしっかり手の内に入れている。秋の達孝太は、「佐々木朗希」にも見えていた。