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「つまらないこと聞くな!」馳浩が山田邦子を怒鳴りつけた“事件の真相”と34年後のグータッチ 

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堀江ガンツ

堀江ガンツGantz Horie

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posted2021/01/09 11:01

「つまらないこと聞くな!」馳浩が山田邦子を怒鳴りつけた“事件の真相”と34年後のグータッチ<Number Web> photograph by AFLO

山田邦子と馳浩は1987年の“事件”から長い時間を経てグータッチのサプライズをファンに見せた

ファンのイライラの矛先は山田邦子に

 80年代前半、新日本のテレビ中継『ワールドプロレスリング』はゴールデンタイムに放送され、一時は毎週20%以上の高視聴率を記録していた。しかし選手離脱などの影響を受け、その視聴率は年々下降。このままではゴールデンタイム撤退が時間の問題という中で、87年4月から番組名を『ギブUPまで待てない!! ワールドプロレスリング』と変え、スタジオ収録を加えてバラエティ色を強く打ち出すという大胆なテコ入れを行った。その時、番組MCを務めたのが当時お茶の間で絶大な人気を誇った山田邦子だった。

 しかし、プロレス番組のバラエティ化はファンの反感を買い、完全に裏目に出てしまう。放送時間帯が月曜8時から火曜8時に変わった『ギブUPまで待てない!!』第1回放送分の視聴率はなんと5.1%。ただでさえ低迷していた視聴率が一気に半減する大惨敗を喫してしまったのだ。

 そしてファンのイライラの矛先は、プロレスに詳しくなかったMCの山田邦子に向かっていった。そんな中、元オリンピック日本代表で、国内プロデビューを控えていた長州軍団のスーパールーキー、馳浩のスタジオインタビューが行われる。

 そこで事件は起こった。

「あの血はすぐに止まるもんなんですか?」

 流血戦となった試合映像を観たあとのインタビューで、山田邦子が「あの血はすぐに止まるもんなんですか?」と、素朴な質問をすると、馳が「止まるわけないだろ!つまらないこと聞くな!」とキレ気味に答え、スタジオが凍りついたのだ。

 この件については、当時プロレスファンからの「馳、よく言った!」との声があがる一方、視聴者からはプロレスラーが女性タレントに対し声を荒げたことに対する非難も集まった。

 結局、プロレス番組のバラエティ化は、わずか半年で頓挫。もとの試合中継スタイルに戻り、山田邦子も降板した。こうして『ギブUPまで待てない!!』という番組とともに、馳浩インタビューは一種の“黒歴史”となっていたのである。

 それから長年、山田邦子とプロレスの絡みはなく、てっきりプロレスが嫌いになったとばかり思っていたが、意外なことに数年前から熱心に会場に足を運ぶプロレスファンとなっていた。それを受けて筆者は6年前、山田邦子に『ギブUPまで待てない!!』時代の話と、あの馳との一件についてインタビューしているので、ここで紹介したい。

【次ページ】 MCになったのはアントニオ猪木から頼まれたから

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