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本山雅志の「やばい」ドリブル、夢を与えた平山相太、川口能活の“圧”と懸命さ…水沼貴史が語る選手権の記憶
posted2020/12/30 11:04
text by
水沼貴史Takashi Mizunuma
photograph by
AFLO SPORT
12月31日から高校サッカー選手権が始まります。今年は、有観客で行われるのは準決勝からと、楽しみにしていたファンの方々にとっては少し寂しいレギュレーションになりましたが、高校生たちが“集大成”の姿を見せられる場所があって本当に良かったなと思います。
選手権に向けて編集部から「過去の大会で印象に残る選手は?」とのお題をいただきました。これまでたくさんの素晴らしい選手を輩出してきた大会なので、挙げればキリがありませんが、例年スタジアムにはお父さんお母さんやサッカーチームの監督やコーチに連れられた少年・少女たちがいっぱいいる。そこで「子どもたちに影響を与えた」という視点で4人選んでみました。
本山のドリブルは「やばい」
まず、挙げたいのは東福岡高校の本山雅志。あの「雪の決勝」で主役になった10番です。
ひと言で表せば「やばい」ですね。瞬時に相手をかわして、狭いスペースへどんどん侵入するドリブル。特に止まっているところからギアを入れたスピードはとんでもなく速かった印象があります。4~5mぐらいで相手を完全に置き去りにしていました。
第76回大会(1997年度)の東福岡は高校3冠を達成したとあってとにかくタレントが豊富でした。昔はとにかく蹴るサッカーが多かったですが、速いウイングを両サイドに配置してどんどんサイド攻撃を仕掛けていくサッカーが選手権でも見れるのかと衝撃を受けた覚えがあります。
そんな中で本山は中央、シャドーの位置で異次元のボールコントロールを見せていた。それまでのクラシカルな10番のイメージは、パスをさばいてゲームを作るという印象。でも本山はドリブルができる怖い10番。時代とともに変化していますが、高校サッカーのなかで新しい「10番」を植えつけたのは彼かもしれません。サッカーに興味を持った小中学生たちがまず憧れるのはやっぱり相手を抜き去る姿。面白いように相手の逆をつく切れ味鋭い本山は大きな影響を与えただろうなと思います。