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「お前の父ちゃんは何やってんだ」痛烈ヤジを浴びた宮崎で…工藤公康の娘・工藤遥加32歳が“涙の初優勝”「プロゴルファーになった娘を信じた家族の絆」
posted2025/04/03 06:02

2010年、日本女子オープンに出場した当時高校生の工藤遥加を見守る父・公康
text by

桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Sankei Shimbun
「お前の父ちゃんは何やってんだ!」
宮崎の大会にはちょっと苦い思い出があった。数年前の日本女子ゴルフツアー・アクサレディス。工藤遥加は当時20代で浴びた、家族へのヤジを覚えている。
父は元プロ野球の大投手・工藤公康さん。西武、ダイエー、巨人、横浜、最後に西武で通算224勝をマークした偉大な左腕だ。
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ヤジは工藤さんが現役を引退し、ソフトバンクの監督を務めていた時代のことである。
「開幕戦のあたりで負けたか何かのときで。(宮崎も)九州なのでホークスファンが多いから……」
チームを7年率いて3度のリーグ制覇、5度の日本一という実績をもってしても、一時の不調の責任も背負うのがリーダーの宿命。
そして、後世に残るアスリートの長女であるという事実は、女子プロゴルファー・工藤の生涯にわたる宿命でもあった。
西武3連覇の黄金時代に誕生
俳優の兄・阿須加さんの妹として工藤家の長女として生まれたのは1992年(他に妹2人、弟1人)。父が先発投手として11勝を挙げ、黄金時代だった西武の日本シリーズ3連覇に貢献した直後の11月だった。
幼い頃からバスケットボールや水泳をはじめとしたあらゆるスポーツに打ち込み、父のゴルフの練習についていったのをきっかけにクラブを握った。本格的に競技に打ち込み大会に出場するようになったのは、高校に入学してから。昨今のゴルフ界では珍しいくらい遅いにも関わらず、卒業後に初挑戦した2011年のプロテストでいきなり合格。最終日にマークした66は、競技で初めてマークした60台という、大一番での強さも見せつけた。