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本山雅志の「やばい」ドリブル、夢を与えた平山相太、川口能活の“圧”と懸命さ…水沼貴史が語る選手権の記憶
text by
水沼貴史Takashi Mizunuma
photograph byAFLO SPORT
posted2020/12/30 11:04
雪の中、国立のピッチで躍動した東福岡高校の本山雅志
“うまかった”国見の象徴だった平山
インパクトという意味では、国見高校の平山相太もすごかったですね。これまでもたくさん語られていますが、やっぱり選んでしまう。少年・少女たちにとっても「何点取るの?」とワクワクさせられた選手だったでしょう。
当時の国見は現代サッカーにも通ずるところがありました。歴史を振り返っても三浦淳宏や大久保嘉人、兵藤慎剛など、一人一人技術が高い選手が揃っている中で「得点に特化するサッカー」をしていました。連戦でも落ちないフィジカル、そして縦に速く、守備でもガツガツとプレッシャーをかける。今で言う「強度が高い」サッカーですよね。
フィジカルの印象が強いかもしれませんが、みんなうまかった。その象徴とも言える存在が平山なのかなと。あの身長(190センチ)なのに柔らかくてうまい。ゴール前でも相手をかわすドリブルができて、シュートパターンも多彩。また、後に大迫勇也などポストプレーが得意な選手が出てきますが、平山もとにかく収まりがよかった。トラップ技術、体の使い方がうまくて、周囲を生かすプレーができていた。小嶺(忠敏)先生の指導も大きな影響を与えたと思いますが「高校サッカー」で身についた技術だったのかなと思います。
プロの厳しさも痛感、現在は指導者への道へ
高校サッカーで大きなインパクトを残した平山ですが、同時に“その後”が難しいということも教えてくれた選手だった気がします。筑波大学に進み、そのまま欧州へ挑戦。志半ばで帰国しましたが、Jリーグでの活躍も過去の期待値を上回るものは残せなかった。そういう意味でも子どもたちがプロの世界の厳しさを知るきっかけにもなったのかなと思います。
現役引退の後、大学に通って再び勉強しながら指導者の道に進んでいると聞きました。彼の経験がサッカー界に残せることは喜ばしいことですし、個人的にも嬉しい。みんなが憧れた存在ですから、もう一度頑張ってほしいなと思います。