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マラドーナ発「戦術進化の革命史」 メッシら現代的10番とクロップ&グアルディオラの発想が生まれたワケ
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byAFLO
posted2020/12/28 11:00
マラドーナを止めに行くミランのバレージ。天才アタッカーがこの世に生を受けていなければ「10番」の進化も、果敢なプレスもなかったはずだ
当のジダンは2006年W杯でマテラッツィにヘディングを見舞い、自らピッチを去った。それは遡ること約25年前、W杯82年大会で檜舞台に登場したマラドーナが、ブラジル戦でバチスタの腹に蹴りを入れて退場した場面を連想させた。マラドーナで始まった新たな10番の時代は、こうして幕を下ろしたのである。
カンブリア大爆発は再び起きるのか
むろん10番は選手にとってもファンにとっても特別な背番号であり続けるだろう。生物進化の如き戦術進化も、サッカーというスポーツが存在する限り止むことはない。だがカンブリア大爆発のような進化が起きる際には、触媒が必ず必要になる。その役割を果たしたのがマラドーナだった。
将来、似たような変異種はピッチ上に出現するのだろうか。そう言い切れる自信は、残念ながら僕にはない。サッキの戦術革命を間近で目撃し、第一線で指揮を執り続けているアンチェロッティも不吉な予言を口にしている。
「サッキが成し遂げたような、テクニカルな意味での『偉大な革命』を今後のサッカー界が見ることはないだろう。なぜなら、あのマラドーナの再来を世界が見ることなど不可能なはずだからだ」
(後編に続く。関連記事からもご覧になれます)
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