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ユーべ10連覇を目指すピルロ監督 戦友ガットゥーゾ、インザーギは“苦労知らずの天才包囲網”結成
posted2020/12/27 17:01
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
2020年の終わりが近づいて、“監督”アンドレア・ピルロのスーツ姿にもようやく目が慣れてきた。
シーズンの3分の1を消化した今季のセリエAにおいて、ピルロが率いるユベントスは首位ミランと勝ち点10差で6位につけている。CLではグループリーグ首位通過を果たした。
マウリツィオ・サッリの後任として、指導経験ゼロのピルロをいきなりトップチームの指揮官に抜擢したインパクトは大きかっただけに、ユーベ経営陣も、ひとまずは胸を撫で下ろしているのではないだろうか。
激しい敵愾心に満ちた目を注いでいる
だが、賢明なピルロ本人はおそらく気づいている。
国中の同業者たち、とりわけ19人のセリエA監督たちが、9連覇チームの指揮官の座へ収まった自分に対して、激しい敵愾心に満ちた目を注いでいることに。
「試合開始から70分間、ゲームを作ったのはうちの方だ。全力を出して勝ちにいったのに、惜しいことをした」
5節で1-1のドローに持ち込んだベローナのイバン・ユリッチ監督は試合後、悔しさを隠さなかった。ベローナがトリノで勝ち点を奪ったのは88年以来の快挙だというのに、闘将ジュリッチは決して満足せず、むしろ白星を取り損ねたと悔しがってさえいた。
12節でも、アタランタがユーベを今季6度目のドローに追い込んだ。プロビンチャーレの名将ジャン・ピエロ・ガスペリーニは、勝ったのは自分たちだと言わんばかりに豪語した。
「今日こそ勝てると確信していたのに。足りなかったのはノックアウトする一撃だけだ。今季のスクデットの行方? ミランもインテルもナポリも有力な候補だ。昨季まで絶対的存在だったユーベは、もはや優勝候補の一つにすぎない」
“打倒ピルロ”という色を帯びている
ガスペリーニやユリッチだけではなく、今季のセリエA指導者たちの目の色が違う。それは打倒ユーベではなく、はっきりと“打倒ピルロ”という色を帯びているからだ。
CLからW杯に至るまで、現役時代にあらゆるタイトルを獲得した天才ピルロの実績には脱帽するしかない。だが、指導経験ゼロの初心者に遅れをとるようなことがあれば、監督業界中の笑い者だ。