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選手に嘘を言わせて…韓国パラリンピック柔道元監督の卑劣な不正手口と“事件”が繰り返される理由

posted2020/12/15 17:00

 
選手に嘘を言わせて…韓国パラリンピック柔道元監督の卑劣な不正手口と“事件”が繰り返される理由<Number Web> photograph by Getty Images

柔道に限らず、パラリンピックの歴史には不正が付きまとってきた

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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 1つのニュースが、パラリンピック競技全体に波紋を投げかけている。

 12月初頭、韓国の検察が、視覚に障害があると偽り健常者をリオデジャネイロパラリンピックなどに出場させ、政府からの報奨金を不正に得たとして、韓国柔道代表の元監督を起訴し、あわせて選手13名を在宅起訴したというニュースだ。

 パラリンピックの柔道は視覚に障害のある選手が出場資格を持つ。矯正視力が0.1までであることなどの基準があるが、元監督は視力検査の際、選手に嘘を言わせて本来の視力とは異なる診断書を作らせ、代表に選んだという。

 また、該当する選手の中にはリオパラリンピックを含む国際大会でメダルを獲得した選手も少なくないと報じられている。

 今回の起訴は、虚偽によって報奨金を受け取った不正に関してだが、話はそこにとどまらず、パラリンピック全体に影響を及ぼしかねない要素を秘めている。

クラス分けは“公平”への思いから

 その前段階として、パラリンピック競技には、出場資格、さらには「クラス分け」が存在することを知らなければならない。

 パラリンピックの競技は、何かしらの障害を持つ選手たちが競うもので、おのずと出場条件がある。

 さらに、障害の度合いに応じて競技は行われる。例えば東京パラリンピックの陸上100mであれば、男子16種目、女子14種目が実施される。脳性まひ、脳性まひ以外、さらに障害の度合いに応じてクラスが分けられ、その数だけ種目が設けられている。

 その根底にあるのは、「公平であること」という考えにほかならない。障害が異なれば、競技条件も異なる。その中でいかにイコールコンディションを保ちながら競うかが重視されてきた。

 クラスを分けるには、選手個々の障害の度合いを測る必要がある。

 柔道なら、国際大会に専門の医者がいて検診を行なってチェックしているし、陸上ならクラス分けをする国際資格が設けられていて判定している。

 このように、どの競技であっても公平性を保つための試みがなされ、制度化されている。

 それでも、裏をかこうとするケースがないわけではない。

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