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女子レスリング、全日本で高校2年生が“世界女王”を破る快挙! アイドルフェイスの若きモンスター誕生
posted2020/12/23 17:04
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Sachiko Hotaka
波乱は大会第4日の初戦で起こった。
過去2度も女子フリースタイル53kg級で世界チャンピオンに輝いている奥野春菜(至学館大)がシニアの大会には初出場となる高校2年生にフォール負けを喫したのだ。
12月20日、駒沢体育館で行なわれた『レスリング全日本選手権』。快挙を成し遂げたのは藤波朱理(=あかり=三重県立いなべ総合学園高)だった。兄は2017年レスリング世界選手権で銅メダルを獲得した藤波勇飛(ジャパンビバレッジ)、父はいなべ学園高レスリング部で監督を務める俊一さんというレスリング一家に育ったサラブレッドだ。
奥野を破った勢いで朱理は準決勝では昨年の全日本選手権で3位入賞の下野佑実(育英大)からテクニカルフォール勝ち。続く決勝で昨年の世界選手権で銀メダルを獲得した入江ななみ(ミキハウス)を6-0で撃破。トータルして見れば、失点ゼロという驚くべき強さで初優勝を果たした。
研究も対策もしていない、自分のレスリングを
会見場で筆者が「初戦ではどんな対策を立てていたのか?」と質問すると、朱理は屈託ない笑みを浮かべながら「いや、対策は立てていなかった」と切り出した。
「研究もしていない。とにかく自分のレスリングを貫こうと思いました」
十八番は長い手足を利用して低い体勢で相手の懐に飛び込み、相手の踵を刈り取るような片足タックルだ。この日は片足タックルの体勢に入ると、実績のある大学生や社会人選手を相手に必ずテイクダウンを奪いポイントを重ねていた。
「いずれの試合も、自分から攻めに行ったことが勝ちにつながったと思います」
セコンドに付いた藤波監督は「普段通りの動きができれば優勝できる」と予想していた。
「朱理は足を触るのがひじょうにうまい。これは天性だと思う。今大会では、そこからポイントにつなげることができた」