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日本初のプロ選手で全日本選手権4回優勝の松井千夏が、スカッシュの楽しく奥深い世界を語る 

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林田順子

林田順子Junko Hayashida

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photograph byYuki Suenaga

posted2020/12/16 11:00

日本初のプロ選手で全日本選手権4回優勝の松井千夏が、スカッシュの楽しく奥深い世界を語る<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

カジュアルに楽しんでもらいたい

 私のレッスンでは小学生から80歳を過ぎたご高齢の方まで参加されて、みなさん自分の体力や体調に合わせてプレーしています。なので、皆さんにももっとカジュアルにスカッシュを楽しんでもらいたいですね。

 一方で難点もあります。まずはスカッシュをする場所が限られていること。海外だとパブリックコートがたくさんあって、誰でも気軽にプレーできるのですが、日本の場合はスポーツクラブの中にあることが多いんですね。もっとコートが増えたらいいのにとは思っていますが、ジムの会員でなくても使えるコートもあるので、興味があったらぜひ探してみてください。

 妊娠していたため欠場した2018年の全日本選手権では、初めてショッピングセンターの中に4面が強化ガラスで囲われたグラスコートを立てて、大会をやったんですね。そんなところでプレーできるのがすごく羨ましくて、実は大会が始まる3時間ぐらい前にこっそり見に行きました(笑)。

 そのとき、出場できない悔しさを感じながらも、来年は絶対に出場するんだ、そう小さな決心をして。翌年、予選からひとつひとつ戦っていって、やっと準決勝でグラスコートに立てた時は、すごくうれしかったですね。

 同じ空間の中でラケットを振り合うので、相手に当たってしまう危険もあるというのも注意したいところ。勢いよく振れば、怪我につながりますから、私がレッスンを行なう時は、ぶつからないようにラケットを振るための動き方なども指導するようにしています。

 今、私は43歳ですが、引退は今のところ考えていなくて。応援してもらえる限りは現役でいたいですね。それと同時に今は、スカッシュの魅力を広める活動も、さらに積極的に行なっていきたいと思っています。オリンピックでプレーをしたいという気持ちは今も持っていますが、たとえ自分がコートに立てなくても、こんなに楽しいスカッシュの魅力や奥深さを伝えて、盛り上げていきたいですね。

松井千夏

松井 千夏Chinatsu Matsui

1977年8月8日、神奈川県生まれ。小学校から高校まではバレーボール部に所属していたが、体育教師を目指して日本体育大学に進学した時にスカッシュと出会う。それから本格的に競技に取り組み、1997年~1999年に全日本学生選手権大会団体戦優勝、1999年には個人戦でも優勝。24歳の時に全日本選手権大会で初優勝、国内大会では約2年間負けなしという記録を作るなどして日本初のプロスカッシュプレイヤーに。日本代表としてアジア大会・世界選手権などにも出場。43歳となった今でもトップレベルで活躍しつつ、競技の魅力を伝える活動も行なっている。

ナビゲーターの俳優・田辺誠一さんがアスリートの「美学」を10の質問で紐解き、そこから浮かび上がる“人生のヒント”と皆さんの「あした」をつなぎます。スポーツ総合誌「Number」も企画協力。

第138回:松井千夏(スカッシュ)

12月18日(金) 22:00~22:24

スカッシュの松井千夏選手は大学時代に競技と出会い、24歳の時に日本一に。その後日本初のプロ選手となり、日本最高峰の大会を計4回優勝。日本代表の中心としても活躍し、43歳となった今でもトッププレーヤーの一人です。昨年41歳で出産。半年後にはコートに復帰し、日本一を決める大会で銅メダルを獲得、周囲を驚かせました。番組では大好きなパン屋で束の間のオフを楽しむ彼女に密着。高齢出産を支えた考え方や、自分と重ね合わせ、励みにしてきた日本女子テニス界のレジェンド・伊達公子さんにまつわるエピソードなどもご紹介します。

第139回
マンスリースペシャル

12月25日(金) 22:00~22:24

第136回から第138回までに登場した、元マラソン選手で現在はランニングアドバイザーの市橋有里さん、日本人初のNHLプレーヤーでアイスホッケー日本代表の福藤豊選手、長きにわたって日本スカッシュ界のトップに君臨する松井千夏選手。第139回は未公開シーンを含む3人の総集編をお届けします。

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