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“NYから期待され続けた”田中将大 7年前の「ヤンキース高額投資」は成功だったのか?
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2020/10/20 17:04
ヤンキースの田中将大投手
ただ、少なくとも昨季までは、1年で最も大事な時期に素晴らしい投球をすることで田中は不足分を補うことができていた。去年までポストシーズンでは通算8戦に先発し、防御率1.76。その8戦で自責点4以上のゲームはゼロ、被打率.157は歴代1位(プレーオフ6戦以上の登板経験がある投手の中で)といった圧倒的な数字を叩き出した。
なかでも2017年のプレーオフでは3試合で20イニングを投げ、防御率0.90と支配的な投球を続けたパフォーマンスは語り継がれる。この年、必ずしも前評判が高くなかったヤンキースは意外な快進撃でワールドシリーズにあと1勝のところまで迫った。その躍進は田中の存在なしにあり得なかったはずだ。
「舞台が大きくても圧倒されず、自分のプレーができる選手は存在する。マサは集中力があり、重要な舞台を好む。重要なゲームであればあるほど、ベストの力を出してくれる。彼がいてくれて嬉しいよ」
アーロン・ブーン監督がそんな風に述べていた通り、10月に快投を続けた田中はいつしか現役屈指の「ビッグゲームピッチャー」と呼ばれるまでに至ったのだった。
契約更新は既定路線だったのに……
こうして田中のメジャーキャリアを振り返っていくと、やはり返す返すも今季プレーオフの乱調は残念だった。これまではポストシーズンになると水を得た魚のようだった田中が、インディアンスとのワイルドカードシリーズ第2戦、レイズとの地区シリーズ第3戦でまさかの2試合連続炎上。インディアンス戦では悪天候という不運があったものの、レイズ戦でも4回5失点と打ち込まれた投球にエクスキューズを見つけるのは難しい。この2試合で防御率12.38と崩れ、ヤンキースの早期敗退の一因となったことで、7年目の印象は一気に悪くなってしまった。
「So, what have you done lately? (それで最近は何をしたの?)」
そんなフレーズが合言葉のようなニューヨークではもう覚えている人は少ないかもしれないが、今季の田中はレギュラーシーズン中10度の先発機会で9戦は自責点3以下と好調だった。シーズン終了時点では、今オフに契約切れを迎えてもヤンキースが複数年契約を提示するのは既定路線というのが地元の論調だったのだ。