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ビエルサ考案「4-1-1-1-3」の“ORIGINAL”な衝撃 「システムは10個」と豪語するワケ
posted2020/10/15 17:03
text by
赤石晋一郎Shinichiro Akaishi
photograph by
Getty Images
2002年、福島Jヴィレッジの監督室──。
荒川が経験したビエルサによる個人レクチャーはシステムの話から始まった。
「その時にシステムには『親』と『子』があるという話が始まり、私はとても驚きました。そんな理論を今まで聞いたことがなかったからです。現代風にいえば“可変システム”という言葉に近いのだと思いますが、その基本的な理屈をマルセロは当時からすでに会得していたのです。
例えば当時のアルゼンチン代表は3-3-1-3のシステムを採用していましたが、これは4-2-1-3を親システムとして、トランスフォームさせたものだという説明でした。
親となる基本システムは4バックで、例えば相手が2トップの場合はDFを1枚中盤に上げて3バックにトランスフォームする。つまり相手フォワードに対して1枚余らせる形でDFラインを形成し、中盤から前線にかけてのマッチアップを明確にするというのがマルセロの基本的な考え方でした」(荒川)
“ユーティリティ・プレイヤー”とポリバレントの違い
監督室ではビエルサによる“システムの教室”が行われていた。
2002年当時は2トップがサッカー界の主流だったのでアルゼンチン代表は3-3-1-3を使用していた。そして現在は、シティに代表されるように3トップ(もしくは1トップ)を基本布陣とするチームが多いので、リーズはDFを4枚とする4-1-4-1としているという訳だ。
例えば第3節のシェフィールド戦は相手が5-1-2-2(3-3-2-2)という布陣だった。相手が2トップであることに適応させる形でリーズは3-4-1-2のシステムを採用している。
シェフィールドの攻撃陣は2トップに2OMF(オフェンシブミッドフィルダー)という現代サッカーでは珍しいシステムを取っている。リーズはそれに対応するために2トップには3バック、2人のOMFに対峙するために左SBのダラスをDMFに上げフィリップスとWボランチを組む形を取ったのである。
「マルセロはよく『どのようなシステムであっても、選手は試合の中で3つのポジションでのプレーを遂行している』と言います。例えば左SBのダラスであれば、SBとして起用されても、試合展開によってはCBとして振舞うこともあれば、中に絞ってMFとしてプレーすることもあるし、オーバーラップして攻撃参加すれば、WGとしてもプレーする。
一般的には複数のポジションをこなす選手をは“ユーティリティ・プレイヤー”と評されますが、ビエルサの考えはポリバレントに近い。
ポリバレントは流れのなかでポジションに応じたプレーが出来る選手という意味になると私は解釈します。監督の指示によってポジションを変えるのがユーティリティ・プレイヤーだとしたら、ポリバレントな選手は試合展開の中で自然と3つのポジションでプレーできる選手です。だから育成年代から複数のポジションの練習を徹底的に行う必要があると考えています」(荒川)