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ビエルサ考案「4-1-1-1-3」の“ORIGINAL”な衝撃 「システムは10個」と豪語するワケ 

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赤石晋一郎

赤石晋一郎Shinichiro Akaishi

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posted2020/10/15 17:03

ビエルサ考案「4-1-1-1-3」の“ORIGINAL”な衝撃 「システムは10個」と豪語するワケ<Number Web> photograph by Getty Images

試合直前に握手をかわしたグアルディオラ(左)とビエルサ

研究をまとめた結果、「システムは10個」

「マッチアップを明確にするというのがマルセロのシステムの考え方の基本だと思います。一方で『システムは単なる布陣に過ぎず重要ではない。システムを準備しても、実際のピッチでは何が起こるかはわからないので柔軟に対応する必要がある』とも語っています。

 最終ラインは4バック(2バック)か3バック(5バック)の2つに要約することができ、中盤と前線の組合わせの多様性により様々なシステムが構築されているのだと私は解釈しています」(荒川)

 ビエルサのシステム論の凄いところは日々進化を遂げているところにある。29個にシステムを分類しただけでは満足をせず、近年はさらに一歩先まで進み“ORIGINAL”システムをベースに大胆な整理を行っているのだという。

「いまマルセロは『研究してまとめて行った結果、システムは10個である』と語っています」(荒川)

「私は選手にシステムを合わせることはしません」

 ビエルサの言う「システムは10個」の概要は次のようなものだ。

 荒川の言うようにDFは4バックをベースとし、いずれも3バックに変化できるという考えで、それぞれに5個のシステムがあり計10システムとなる。この10システムについては、前述したように3トップと1トップは同義とするとか、5バックは3バックと解釈するというような整理がビエルサによって成されているものと思われる。そして、“ORIGINAL”は基本システムであるために、10システムにはカウントはされていないという。

 こうしたビエルサによるシステムの整理は、指導や育成のためのメソッドとして研究が続けられている。例えばバルセロナやアヤックスは育成世代から共通のシステムで練習を行い、トップチームでも通用するようなスペシャリストを養成するという方法論で知られている。

 しかしビエルサの育成に対する考え方は違う。彼は育成やシステム論について、こう語っているという。

「育成年代は10システムを全て経験した方がいいと私は考えます。昔はスペシャリティが重要視されていましたが、今はゲームの流れの中で各ゾーンや状況に応じたプレー対応が強く求められています。システムをトランスフォームすることや、ポリバレントにプレーする必要があることを選手も知っておく必要があると考えます。

 私は選手にシステムを合わせることはしません。『システム』と『戦い方』を指導するとき、自分が心から納得できるやり方を選手に対しても指導するべきだと考えているからです。自分が信じている方法でしか監督は情熱を持って指導できないものです。ある選手がシステムや戦いかたに適応できていないのであれば、監督は徹底的に選手に対して指導をすべきなのです」

【次ページ】 「ビエルサを敬愛もしているが、憎んでもいる」

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