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ビエルサ考案「4-1-1-1-3」の“ORIGINAL”な衝撃 「システムは10個」と豪語するワケ
text by
赤石晋一郎Shinichiro Akaishi
photograph byGetty Images
posted2020/10/15 17:03
試合直前に握手をかわしたグアルディオラ(左)とビエルサ
「ビエルサを敬愛もしているが、憎んでもいる」
実際にビエルサはリーズでも言葉の通りの実践を行っている。地元出身の有望株であったフィリップスはもともと攻撃的な選手だったが、ビエルサによって守備的MF(アンカー)へとコンバートされた。フィリップスは「新しいポジションに適応するまで6カ月以上の時間がかかった」と語っている。その研鑽により、フィリップスは守備的MFとしてイングランド代表選手に選出されるまでに成長した。
これまで「才能はあるけど、ひ弱だ」「下部リーグレベルの選手」と批判されていたFWバムフォードも、ビエルサによって鍛え上げられた選手の1人だ。今では前線からのプレスだけではなく、時にはDFラインまで下がり守備をし、ポストプレーやパシージョを作る動き、そして裏に抜けるプレーで得点を奪うといった幅広いタスクをこなす選手として活躍している。
今季プレミアリーグでは開幕から3試合連続ゴールを決め、シティ戦では得点こそなかったが、ピッチの端から端まで走るようなロングスプリントを何度も見せ、数々の決定機を演出した。ひ弱なエリートから脱皮し、逞しいCFとして存在感を見せているのだ。バムフォードはメディアの取材で、「ビエルサを敬愛もしているが、憎んでもいる。それだけ過酷な練習を課せられた」と、その指導の激しさを口にしている。
「試合について、あなたはどう思いますか」
10月3日のリーズ・ユナイテッドのホーム、エランド・ロードでのシティ戦──。
試合中、ビエルサはピッチサイドで顔を赤らめて声を張り上げ、鬼神のごとく指示を飛ばし続けた。ホイッスルが鳴った瞬間、しゃがんだまましばし放心したかのように俯いた。
そして顔をあげると、盟友ペップと笑顔で握手を交わした。
ビエルサはペップに向かって「試合について、あなたはどう思いますか」と語りかけたという。
ペップは「ゲームが終わって1秒後に、私はこの試合について分析することはできませんでした」とメディアのインタビューで語っている。ペップが自らの弱みを明かすように語ったのは、先人たるビエルサは既にゲームについての分析が終わっていたのだろう、という畏怖の念ゆえだったのだろう。