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菅野智之、大野雄大との最強エース対決を制す! 勝因は“時間”を操る4次元投球
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2020/09/09 12:25
中日・大野とのエース対決に勝利し、開幕10連勝を飾った巨人・菅野。
悪い時にどう結果を残すか
ボールがいかない。
制球を思い通りにできない。
調子のいい時に相手を抑えるのは当たり前だが、そういう悪い時にどう結果を残すか。特に昨年、腰を痛めてからは、自分でも思うようなボールが投げられない時期が続いた。
その中でそういうピンチのときに、そのピンチを脱出できる引き出しをいくつ持てるか。その危機管理への意識をより強く持つようになった結果だった。
“時間”という要素を加えた4次元ピッチング
そしてもう1つ、昨年の故障をプラスに転じた結果が、オフに鴻江寿治トレーナーの指導で挑戦した腕から始動する新フォームへの挑戦だった。
「今でもまだまだ試行錯誤の連続。微妙にグラブの位置や引き方も変わっている」
微調整の続く中で1つはっきり出ているのが、腕を強く振れるようになったことでの球速アップだった。
その結果、普通の投手が縦、横、前後と3次元で相手打者を抑え込む中で、菅野はその3次元にさらに“時間”という要素を加えた4次元ピッチングへと進化することができている。
「今まではカットとフォークが同じくらい(の球速)で138、9km。いまは直球とカットの間の144、5kmのフォークが入ることでメリハリができて幅が広がった」
今季の平均球速(データは全てDELTA社サイト)を比べてみると、真っ直ぐとツーシームがそれぞれ149kmと148.5kmの同じスピード帯で、フォークが141.8kmで次のスピード帯にくる。そしてカットボールの138.9kmからスライダーの134.7km、カーブの127kmと5つの球の速さの変化がある。