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菅野智之、大野雄大との最強エース対決を制す! 勝因は“時間”を操る4次元投球
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2020/09/09 12:25
中日・大野とのエース対決に勝利し、開幕10連勝を飾った巨人・菅野。
宝刀・スライダーの抜け球が多くなった
一方、立ち上がりが不安定だった菅野は、悪いながらも、微調整をしながら何とか点を与えない。
実は最近の菅野は連勝記録を伸ばす中でも、決してピッチングの状態は万全ではない試合が続いている。特に8月18日に阪神を相手に3安打完封、1対0で8勝目を収めて以降は、状態はむしろ下降線と言ってもいい。
宝刀・スライダーの抜け球が多く、それを意識して逆に引っ掛けてしまう。制球力に絶対の自信を持つ右腕が、ボールの制御に苦労する場面が多く見られるようになっていた。
配球パターンを大胆にチェンジ
それでも勝ち続けた。
背景にあったのが、菅野の持っているピッチングの引き出しの多さだった。
1つは配球パターン。
25日のヤクルト戦では初回にヤクルト打線に捕まり4安打を浴びて2失点。本人も「正直、何点取られるのかなという感じだった」と振り返ったほどに苦しい内容だった。
しかし1回を投げ終えると、すぐさまベンチで女房役の大城卓三捕手と話し合って、これまで勝ち続けてきた配球パターンをガラッと変えてしまう。
「今までにないような配球にしよう」と早いカウントから決め球のフォークを多投し、組み立てを大胆にチェンジ。そして中盤以降は再びスライダーと真っ直ぐを軸に相手を封じ込めて9連勝につなげた。
「配球を変えたことで打者の反応が違った。こういう配球をすることもあるんだ、と相手が思ってくれれば、これからもまた違ったパターンも作れる。新しい引き出しが増えたと思います」