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注目はマスクだけではない。大坂なおみ、コーチが明かす中断期間の“意外な”取り組み。
posted2020/09/04 08:00
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
USA TODAY Sports/AFLO
注目を集めるマスクの文字より先に、遠目にもわかったことは、1回戦ではつけていなかったサポーターを負傷している左太股に巻いていたことだった。
2時間3分に及んだ1回戦で痛みが増したと言っていた。ケガは、一定期間休まなければ回復することはない。できることは、負担の程度を最小限に抑え、悪化のスピードを遅らせることだけだ。
そういう意味で、理想的な勝ち方だっただろう。カミラ・ジョルジは欧米の選手としては168cmと小柄で華奢だが、強気を前面に押し出すパワーヒットが持ち味。強打一辺倒という評価は決して褒め言葉ではないが、そう言われても強打を通す頑固さで、一時は世界ランク26位まで上昇した。
2人は2018年の東レパンパシフィック・オープンの準決勝で対戦し、大坂が6-2、6-3と快勝している。頭脳的なテクニシャンには苦しめられることが少なくない大坂だが、ジョルジのようなタイプは苦手ではない。パワー対決、打ち合いなら負けないという自信もある。
1回戦の2倍以上走らされる展開も。
そんな自信に満ちた貫禄の勝利だった。ウィナーの数は大坂が14本でジョルジが15本とほぼ互角だったが、アンフォーストエラーは大坂の11本に対してジョルジが24本。ジョルジの強打に対して大坂は無理せずセンター返しをベースにし、アングルに攻められて振り回されることをうまく避けていた。
そして、なるべく早いタイミングでチャンスと見たら自分から仕掛けてポイントを奪った。
試合時間は1時間10分。データによれば、この試合で大坂が走った距離の総計は約843メートル。フルセットに及んだ土居美咲との1回戦では2倍以上の1967メートルを走らされた。
単に試合が長かったからではなく、1ポイント平均でも1回戦では約11メートル、2回戦は約8メートルだ。数字にしてみれば、たったその程度なのかと思われそうだが、テニスはストップ・アンド・ダッシュの連続という点で下半身に負担がかかるのだ。