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大坂なおみが話した“経験の差”に、16年前のピエルスとシャラポワの台詞を思う。
posted2020/09/06 14:30
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
誰が言ったセリフだっただろうか。
まだ10代だったマリア・シャラポワに勝ったベテラン選手が、勝因についてこう語った。
「私は17歳の女の子がどういうものか知っている。でも彼女は29歳の女性を知らないでしょう?」
つまりは経験の差のことを言っていた。17歳と29歳という年齢はなぜかはっきり覚えているのに、誰だったか忘れてしまったので、不意に昔の原稿を探し出し、それが2000年の全仏オープン女王のマリー・ピエルスだったとわかった。
元女王ピエルスとシャラポワの対決。
今から16年前、2004年の全米オープン3回戦のことだ。
母国の全仏オープンで25歳に2度目のグランドスラム優勝を遂げてから、4年の間にケガでひどく沈んだピエルスは、29位まで戻ってきたとはいえ、過去の人。17歳でのセンセーショナルなウィンブルドン優勝から2カ月のシャラポワは、当時世界7位ながら女子テニス界でもっとも輝いている選手だった。そして、フルセットの末に勝ったのがピエルスだったのだ。
あのときのピエルスと今の大坂では立ち位置も年齢もまったく異なる。しかし、経験の力が試されたこの3回戦に、ふとあの台詞を思い出した。
対戦相手は18歳のマルタ・コスチュク。2017年の全豪オープン・ジュニアで14歳にしてチャンピオンに輝いた「天才少女」で、翌2018年、15歳の全豪オープンでもはやジュニアでなくプロのほうで予選を勝ち上がり、本戦の3回戦に進出している。
その後のグランドスラムでは予選の壁に阻まれ続けたが、今回はコロナの影響で欠場者が増えたことにより、137位ながら本戦出場を果たすと、1回戦で世界ランク70位のダリア・カサキナ、2回戦で同45位のアナスタシア・セバストワをいずれもストレートセットで破って勝ち上がってきた。