Sports Graphic Number WebBACK NUMBER

半年ぶりに再開! 来夏を見据えた熱闘。
リードジャパンカップレポート <女子編> 

text by

津金壱郎

津金壱郎Ichiro Tsugane

PROFILE

photograph byIchiro Tsugane

posted2020/09/01 11:00

半年ぶりに再開! 来夏を見据えた熱闘。リードジャパンカップレポート <女子編><Number Web> photograph by Ichiro Tsugane

優勝した森が苛まれていた不安とは。

 残るは準決勝で完登を記録した2位通過の谷井菜月(橿原高)と1位通過の森の2選手。

 昨季W杯リード年間3位の谷井は今大会は優勝を目標に掲げてトレーニングに取り組み、予選、準決勝のなかで自信を深めていたが、決勝課題の最終局面で落とし穴にはまった。最終面の上部攻略は問題ないと踏んだ谷井は、下部から丁寧に登っていく。最終面に到着し、あとは小さなホールドをつなげながらTOPホールドをつかんでクリップするだけ。その一瞬の安堵感が谷井の動きを固くさせる。右肘が上がり体が壁から剥がれてフォール。悔しさに頭を抱え込んだ。

 最終競技者で完登を決めて2度目の優勝を手にした森は、大会前は不安に苛まれていたことを吐露する。

「緊急事態宣言の時は練習が全然できなくて、解除されてからトレーニングを始めたけれど、前のような持久力になかなか戻らなくて。大会1週間くらい前になって、ようやく元通りの状態に戻れたかなっていう感じでした」

10代の選手が躍動する必然性。

 今大会の結果は、優勝が森、2位が野口、3位には柿崎が入った。森と柿崎の仲の良さはクライミング界では有名で、ふたりで初めて揃って表彰台に立てたことに、柿崎は冒頭のコメントを残したのだった。

 今大会は決勝進出8選手のうち、31歳の野口を除けば、高校生6選手と中学3年の小池はな(埼玉県山岳・スポーツクライミング協会)だったことで、『若手の台頭』と取り上げられた。だが、クライミングにおけるリード種目の特性やスポーツ環境に鑑みれば、それはトピックに値しないだろう。

 野口のように競技に専念できるスポーツ環境を手にする20歳以上の選手がひと握りしかいない現状にあっては、10代の選手たちが躍動するのは当然の結果と言えるからだ。

【次ページ】 23歳の野中生萌は13位にも手応え。

BACK 1 2 3 NEXT

ページトップ