“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
小野伸二も驚いた山崎光太郎の技術。
プロでの苦難は金の卵へのアシストに。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/08/18 17:00
J1清水スカウト・山崎光太郎氏。高原や小野と競い合った高校時代、そしてプロでの苦い経験が今に繋がっていると話した。
「入口で厳しさを持たないと」
技術があっても誰もがJリーガーになれる訳ではない。それがJ1となれば尚更だ。だからこそ、自分の目、クラブのスタイル、監督の哲学。山崎はすべてを加味して「選別」をする。
「高橋大悟(現ギラヴァンツ北九州)のようにプロとして生き残っていける強烈な武器を持っているか。鈴木唯人(清水)のようにどんな戦術でもシステムでも対応できるか。重要なのは、プロに入ってから彼らがその世界でちゃんと生きていけるかどうか。僕らはそこをずっと気にしないといけない。加入させたから良しではなく、その後のプロサッカー人生が、たとえ他のチームに移ったとしても、ちゃんと続けられるかどうかが重要です。だからこそ、入り口で厳しさを持たないといけないんです」
自らのキャリアも高校サッカー、プロで成功したとは言えないサッカー人生だった。だが、その一瞬、一瞬で自分と向き合い、必要な選択をしてきた。中京大サッカー部に入ったことも、清水でプロとしてのリスタートを切ったのも、29歳でスパイクを脱いだのも、真剣に自分の人生を力強く歩いてきた結果だ。だからこそ今、スカウトという立場で、新たなプロサッカー人生の萌芽を、責任を持って見つめている。
「常に謙虚な気持ちで選手たちと向き合いたいと思っています。正直、こうやって取り上げられるのも好きじゃないんですが(笑)、選手たちには少しでもいいサッカー人生を送って欲しいと思うので、そこに少しでもお役に立てたらなと」
最後に改めて13年目を迎えるスカウトという仕事への矜恃を問うた。
「スカウトになりたての頃と変わったのは、選手を勧誘するということよりもエスパルスで挑戦をさせる形で受け入れることを大事にするようになりました。甘い言葉を使わずに『ここで本気で挑戦をしてほしい』ときちんと伝える。呼ばれたから来ました、というスタンスで入った選手と、自分がここで成功するんだ、という強い気持ちで入ってきた選手とでは、プロに入ってから大きな差が生まれる。後者は現状を言い訳にせず、困難に対してもポジティブにやれる。プロの世界がそんなに甘くはないことは、僕が身に染みて分かっていますからね」