“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
小野伸二も驚いた山崎光太郎の技術。
プロでの苦難は金の卵へのアシストに。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/08/18 17:00
J1清水スカウト・山崎光太郎氏。高原や小野と競い合った高校時代、そしてプロでの苦い経験が今に繋がっていると話した。
スカウトに生かす、プロでの苦難。
周りから言われるほど才能もないし、エリートでもない。プロのキャリアも思い通りとはいかなかった。だからこそ、選手が持つ経歴や実績に左右されず、人間そのものを捉えることができる。厳しいプロの世界で戦っていく技術と人間力を持った金の卵を見極め、プロの門を潜るアシストをしたい。山崎はプロでの苦い経験を、現在のスカウト業にしっかりと生かされている。
「プロ生活で感じたのは、逆境の時にこそ自分が試されるということ。プロの生活は誰もが苦労する。でも、そこで何を考え、どうたち振る舞うか、どういう人たちが周りにいるかが大事だと、自分のサッカー人生で学んだ。それは今に生きています。
選手を見極める上で注目するところは、個人としてもチームとしても勝ち方、つまり勝利へどう導いているか。このチームがどういう流れで、どのような過程で勝利を掴んでいるか。その中で選手がどういうプレーや立ち振る舞いをしているか。逆にうまくいかない時、苦しいときに何ができているか、どんな言葉を発しているのか。そこは大事にしています」
冷静な河井、闘争心むき出しの白崎。
長いスカウト生活の中で、印象的な選手は何人かいる。強いて言えば、と2人の選手の名前を教えてくれた。昨季まで清水で副キャプテンを務めるなどチームの柱を担う河井陽介、そして清水から鹿島アントラーズに移籍した白崎凌兵だ。
「河井は選手権で準優勝(藤枝東)していますが、彼は劣勢の時ほど落ち着いていた。慶應義塾大の時も負けているときに凄く際立っていたんです。気迫を全面に出すし、冷静にポジションを取ってボールを奪う。ボールを持っても決して焦らない。普通は焦ったり、ムキになって前へ、前へ行ってしまうのですが、ゆっくりリズムを作り、気付いたら自分たちのリズムにしている。それを見た時は凄いなと思った。
白崎は高校2年のインターハイで見たときは、市立船橋にボコボコにやられていたんだけど、彼だけは最後まで闘争心を失わなかった。ガンガン仕掛けて、奪われても何度もトライしてなんとかしようとしている姿勢が浮き出て、とても印象的だった」