ツバメの観察日記BACK NUMBER
ビールの売り子は無言、ヤジに注意。
阪神×ヤクルト、有観客試合観戦記。
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph byKYODO,SHOICHI HASEGAWA(in the article)
posted2020/07/16 10:00
阪神の黄色がところどころに目がつく阪神甲子園球場。
マザーテレサのような博愛精神で。
高山に対しても、「明治大学時代のあなたの輝きはそんなものじゃなかった。プロ5年目、勝負の年。頑張れ!」と心の中でエールを送った。ガンジー、あるいはマザーテレサのような博愛精神で、これだけ徳を積んでおけば、来世においては雨天中止を嘆くこともないだろう。
チケットを手にいざ入場。まずは検温。ほっともっとフィールドではカメラの前に立ち止まり、モニターに映し出される自分の額の部分に「35.8℃」と表示されるタイプだったが、甲子園では前方に備えつけられているカメラの前をスルーするだけ。
自分の体温はわからなかったけれど、混雑緩和のためにはこちらの方が適している。こちらも、まったく並ぶことなくスムーズに入場できた。
ビール売りのお姉さんたちがいた。
コンコースを抜けて球場に入ると、視界が一気に広がる。
まだ明るい上空の青空と白い雲と、沈みゆく太陽が僕を迎えてくれた。客席は一定間隔で空席が目立つ。それは、「ソーシャルディスタンス」が可視化されたものだった。
感激したのが、ビール売りのお姉さんたちが場内を闊歩していたことである。先日のほっともっとフィールドでは「アルコール類は発売禁止」とされていて、ノンアルコールビールのみの販売だったし、売り子さんもいなかった。しかし、甲子園では以前と変わらぬ形で生ビールが売られている。
いや、「以前と変わらぬ」はウソだ。売り子さんは全員マスクをして、腰には除菌スプレーがぶら下げられ、その手にはビニール手袋をはめている。さらに、「ビール、いかがですか?」の声もない。無言のまま通路を歩いている姿は、やはり違和感があった。
さっそく購入する。彼女の手元にある小さなビニール袋に代金を入れ、そのビニール袋を介してお釣りが戻ってきた。とことん接触を避ける工夫がなされていた。