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パ・リーグ人気の運営裏側に迫る。
「勝敗の外にあるものに価値を」 

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鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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posted2020/07/01 11:50

パ・リーグ人気の運営裏側に迫る。「勝敗の外にあるものに価値を」<Number Web> photograph by PLM

リーグ開幕前、オンライントークに参加したパ・リーグ各球団の主力選手たち。6球団が一堂に会する貴重な機会となった。

ゲームを見ることはほとんどない?

「広報業務の他に、人材育成プロジェクトなどにも関わっているので、毎日、その日の状況によって仕事内容は変わっていきます」

 広報部長であり、メディア事業部、事業開発本部にも属している森の業務は多岐にわたる。

 例えば、スポーツビジネスに携わる人材を育成し、転職を支援するキャリア事業や、アメリカのマサチューセッツ工科大学と提携し、講師を招き、パ・リーグ6球団の球団職員向けに学術的な講演会を開く「パ・リーグ―ビジネススクール」という事業も担当している。

  ただ、夕方6時、いざプロ野球のナイターが始まる頃にはオフィスをあとにする。パーソル パ・リーグTVに関わるスタッフなどはそこからが仕事だが、森の場合は“ゲームの外側”にこそ仕事がある。

「私の業務は試合とは直接関わらないことが多いので、ゲームを見ることはほとんどありません。オフィスにはモニターが何台もあるので、試合がついていれば目にはしますけど、私はいまだに野球についてはあまりわからないので(笑)」

勝敗の外にあるものに価値を見出す。

  代表の根岸のように、球団職員としてプロ野球の現場を経験し、草創期のプロジェクトからPLMに関わってきた人間もいるが、今のPLMを支えているのはほとんどが、かつてのパ・リーグを知らない、森のような入社2、3年目の人材である。

  彼ら、彼女らが掘り起こしているのは球場に行って野球を見る人たちだけではなく、むしろ選手個人のストーリーや、球団マスコット、チアガールなどゲームに付随するものに関心を寄せる人たちだ。

  実際にパーソル パ・リーグTVのコンテンツを見てみると、野球のプレーはもちろんだが、ゲーム以外での6球団を横断した特集動画などが数多くある。そうした勝敗の外にあるものに価値を見出し、新たな関心を創造していったことが、パ・リーグの観客動員が増えたひとつの要因だろう。

  ひたすら野球観戦を楽しみたい人もいれば、スタジアムでお酒を飲むのが好きな人、特定の選手を追いかけたい人、球場の一体感に身を浸したい人、マスコット目当ての人もいる。すべてがプロ野球というビジネスの顧客である。

  かつて、ゴジラ松井のお嫁さんを夢見ることで野球とつながっていた森には、それがよくわかるのだ。

【次ページ】 「プロ野球を支える職業」をベスト10に。

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