One story of the fieldBACK NUMBER
パ・リーグ人気の運営裏側に迫る。
「勝敗の外にあるものに価値を」
posted2020/07/01 11:50
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph by
PLM
パシフィックリーグマーケティング(PLM)の広報部長である森亜紀子は、小さい頃、自分は将来、ゴジラ松井のお嫁さんになるんだと思い込んでいた。
「私は静岡の生まれなんですが、家ではいつも祖父が巨人戦を見ていました。おそらく中継がそれしかなかったのかもしれません。私は野球のことはほとんどわからなかったんですが、松井秀喜さんのことがずっと好きだったんです」
少女の妄想には根拠があった。
ベンチでひと際、華やかなオーラを放っている長嶋茂雄監督の奥様が亜希子さん、4番を打つ清原和博選手が結婚したのが亜希さん……。ならば、いまだ独身のホームラン王、松井さんのお嫁さんだって「アキコ」のはずだ、と……。
ルールや勝敗の機微は知らずとも、そういう観点で野球に夢中になっていた。
一方でパ・リーグにはどんな球団があるのかもわからなかった。ガラガラの客席で流しそうめんをやっていた川崎球場がロッテの本拠地だったということも、ライオンズがもともと福岡にルーツを持っていることも知らなかった。
31歳。夢から覚めた森は今、そのパ・リーグの人気を裏から支える会社に勤めている。
コンテンツの価値を高める仕事。
3年前、アメリカのコーヒーチェーンを日本で展開している企業から転職した。
「コンテンツを持っている会社で、その価値を高めていく仕事がしたかったんです。もともとバレーボールやプロレスにハマったりと、スポーツに接することが好きだったので、野球という成長しているコンテンツを持っているPLMは魅力的でした」
森の1日は朝8時30分、電車に揺られ、オフィスに向かうことから始まる。朝はまずメディア向けのリリースを確認したり、リリースを出した後であれば、掲載情報をチェックしたりすることからスタートし、その後、クライアント企業との打ち合わせ、社内ミーティングなど慌ただしく時間が流れていくという。