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コロナ禍とBLM運動をどう解決?
NBAリーグ再開に立ちはだかる難問。
text by

宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byGetty Images
posted2020/06/17 17:00

元NBA選手で優勝経験もあるスティーブン・ジャクソンがミネアポリスでのBLMデモに参加。無くなったジョージ・フロイドとは長年の友人だった。
新型コロナ禍に加えてBLM運動の影響も。
ここまでは、“バブル”における安全と行動の自由のバランスをどこで取るかの問題だった。
それも簡単なことではないのだが、ここにきて、現在アメリカで広がる“BLM(ブラック・ライブズ・マター=「黒人の命を軽視するな」の意)”の運動が絡んできた。
一部の選手から、NBAが再開することで、世間の話題が試合の勝敗や、選手の活躍に移り、現在、全米に広がっている社会正義に向けての抗議運動に水を差すことになるのではないかと懸念の声があがったのだ。
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たとえば、米国『Yahoo Sports』の記事で、匿名の黒人選手の声として、こんな声が引用されていた。
「この時期に再開に合意することでどんなメッセージを発信することになるのか? 今、こうして抗議のデモ行進をしているのに、この恐ろしい状況下に家族を置いて、オーナー自身は行かないような場所に行って興行するのか? それは意味をなさない。時代の逆戻りだ」
つまり、自由の制限された環境に隔離されるというのは、奴隷制時代の記憶を呼び起こすような状況とすることは、世間に対して望ましいメッセージではないというわけだ。
NBAにおいてBLMは義務でありライフワークに。
この意見は極端な例かもしれない。
しかし、そういう見方を笑い飛ばすことができないのが、アメリカでの奴隷制やその後の人種差別の歴史なのだ。
黒人選手の割合が多いNBAにおいて、BLMの運動は今では多くの選手にとって生活の一部だ。ライフワーク、義務だと感じている選手も多い。
SNSで発信するだけでなく、実際に地元のデモに参加している選手も多い。それだけに、運動が盛り上がりを見せている今、自分たちのことだけを考えてシーズンを再開することが正しいことなのかと迷う選手は、決して少数派ではない。