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コロナ禍とBLM運動をどう解決?
NBAリーグ再開に立ちはだかる難問。
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byGetty Images
posted2020/06/17 17:00
元NBA選手で優勝経験もあるスティーブン・ジャクソンがミネアポリスでのBLMデモに参加。無くなったジョージ・フロイドとは長年の友人だった。
再開したリーグに参加しない権利も守るシルバー。
「(隔離地でのシーズン再開は)誰にでもできることではない。選手、コーチや審判など、関係者全員が大きな犠牲を払うことになる。理想的な状況ではない。私たちはパンデミックの中、4000万人が失業中という実質的な不景気以下の状況の中、そして国内の社会不安の中、自分たちの“ノーマル”を見つけようとしているのだ。自分にはできないと思う人がいるのは理解できる」(シルバー)
実際、再開案では、ウイルス感染に対する不安をはじめ、様々な理由からシーズン再開に参加しない選手がいた場合、その間のサラリーは支払われないものの、それ以外の処分は一切ないとの取り決めも含まれている。
「それぞれに、適正な役割というのがある。選手のなかには、フロリダでバスケットボールをすることを選ばない選手もいる。彼らにとっては抗議活動が適正な役割なのだと思う」とシルバー。
選手の反対意見に対して、声を封じ込めたり、契約を理由に強制的に参加させようとするのではなく、理解を示し、寄り添い、その上でリーグとしてどういう方法を取れば多くの合意を得て前に進むことができるかを判断する。それができるところが、シルバー・コミッショナーが、オーナーだけでなく、多くの選手たちから信頼されている理由だ。その関係があるからこそ、この困難なときに再開というチャレンジに挑むこともできる。
シルバー「再開を試す義務があると感じている」
実のところ、リーグにとって今回のシーズン再開は、多くの経費がかかるため、決して多くの利益を生み出すわけではないとも言う。
それでもシーズンを再開する決断をしたのは、それが「私たちがやるべきことだから」とシルバーは言う。
「NBAのコミュニティとして、NBA再開を試す義務があると感じている。再開しないということは、単に横で見ているだけで、実質的にウイルスに白旗を上げることだからだ。これは私たちがやるべきことなんだ」