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「欧州でも勝てる日本人指導者に」
宮沢悠生通訳の信頼構築術・後編。 

text by

中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

PROFILE

photograph byYuki Miyazawa

posted2020/05/28 11:40

「欧州でも勝てる日本人指導者に」宮沢悠生通訳の信頼構築術・後編。<Number Web> photograph by Yuki Miyazawa

ケルン、ザルツブルクで通訳を歴任した宮沢悠生氏。大迫勇也や南野拓実の飛躍は彼の力によるところもあるだろう。

指導者同士でプレーするとすぐケンカ。

「いつも痺れています。自分がずっと土のグラウンドでやってきたというのもありますが、天然芝の匂いを嗅いで、1時間半前にピッチで準備しているときに充実しているなぁって感じています。もちろん試合に勝ったときもそうですし、選手の成長する姿を見るとか、いろんな充実感があります。本当に指導するのが好きで、楽しいです」

 日本と他国では様々なところに違いがある。良くも悪くも常識だと思っていたことが、ちょっと見方や考え方を変えると全然当たり前ではないと気づく。

 宮沢にドイツで感じた最初の衝撃について尋ねると「いろんな衝撃があったので、1週間後に質問されたらまた別のことを言ってるかもしれないですけど」と前置きしたうえで、「大人が負けず嫌い」という点をあげた。

「例えば指導者同士でプレーするとき、やっぱりみんなずるいし、みんな負けず嫌いで、すぐケンカするんですよ。日本でスタンダードとされるような感情を抑えながらチームのためにプレーするというのが自分にはあったんですけど。『あれ? 大人もこんなにずるくて、ケンカするのって。感情のままにプレーするのもいいんじゃない?』と感じたところは、衝撃というか、感動でしたね。こいつら、勝つためにサッカーしてるんだなって思って」

サッカーは遊びだが遊び半分ではない。

 ドイツ人の多くは「サッカーは遊び」だと言う。でも「遊び半分」という感覚ではない。遊びだからほどほどではなく、子どもの専売特許というわけでもない。むしろ遊びだからこそ夢中になるし、本気にもなるのではないか。ドイツでは大人も、いや大人たちこそ、感情全開でサッカーをする。宮沢にとってそれはポジティブな衝撃だった。

「僕は中学くらいまでは王様気分でサッカーをやっていたんです。でも気がつくと感情を我慢し、抑えながらチームのためにプレーするようになっていました。そこで、自分がもう1回バーンと感情を出してプレーしてもいいんだと思ったんです。

 いやむしろ、“感情を出さないと何を考えているかわからない”という状況でサッカーできるのがすごく楽しい。やるのも指導するのも楽しいし、見ていても、みんなが感情を出していて楽しい。どのカテゴリーでも、どんなふうに関わっても、サッカーが楽しくなったのがその時期なのはよく覚えています」

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